桂二葉独演会

桂二葉独演会に行きました。「向う付け」「まめだ」「近日息子」の三席。開口一番は柳亭市助さんで「十徳」だった。

「向う付け」は東京落語の「三人無筆」。主人公・喜六のアホだけど憎めなくて可愛いキャラクターが光る。隠居が亡くなって、未亡人になったご寮さんのところへ悔やみに行く段。悲しみにくれていたご寮さんが思わず笑ってしまうのがとてもいい。

それで、帳場を頼まれてしまい、無筆なのに引き受けてしまう喜六の人の良さ。どう対処していいか知恵を付ける女房もきっとこの亭主はしょうもないなあと思いながらも、心の底から惚れているんだなあと思う。

だが、作戦失敗。すでに帳場にはもう一人、無筆の男がいて…。隠居の遺言で帳場は向う付け、銘銘付けになっていますと対処、人の好い弔問客の一人が帳付けを一手に引き受けてくれて、事なきを得るが…。この人、本当に人が好いなあ。

「まめだ」。秋の噺をします、と言って心温まるファンタジー。これがとても良かった。役者の市川右三郎に悪戯をする子狸を懲らしめるために、右三郎はトンボを切って傘の上から落としたが、そのために子狸は怪我をして、身体を痛めてしまう。

小僧に化けて右三郎の母親のところに何日か膏薬を買いに来た子狸だが、お金はないのでイチョウの葉を銭に変えて支払っていた…。だが、貝殻に盛られた膏薬の使い方がわからずに、子狸は死んでしまった。そのことが判った右三郎は、本当に申し訳ないことをしたと供養のために線香を手向ける。すると、子狸の遺体に沢山のイチョウの葉が舞い降りた。「狸たちの香典だ…」。スタジオジブリのアニメーションのような心がホッコリする噺だった。

「近日息子」。父親に先繰り機転の大切さを教わり、鵜呑みにした作次郎が医者、葬儀屋、住職と次々と発注してしまうのがこの噺のポイントだと思っていたが、さにあらず!二葉さんは近所の人たちが悔やみに行かなくちゃいけないと話しているところを思い切り膨らませて、客席を爆笑の渦に巻き込んだ。

二人の男の言葉に関するボケとツッコミ、まさに掛け合い漫才を見せられているような面白さだ。洋食屋でソースを取ってくれが、ホースを取ってくれになり。鰻屋で鰻巻きを頼もうとして、寝間着を頼んだり。ちゃんちゃらおかしい、が「天婦羅、食いますか」になり。ヒエピタがピタパになり…。

桂二葉さんは愛嬌のある噺家だ。とても親しみやすい。それで、噺の芯はブレのない、しっかりした技術を持っている。上方落語に馴染みのない演芸ファンも、二葉さんの落語はスッと入っていける不思議な魅力を持っている。

来年も今年同様に、1年間で4回、橘蓮二プロデュース「二葉チャレンジ!」が開催される。来年は必ずネタ卸しをするという。まず1月は「天神山」。最後の4回目には「立ち切れ線香」に挑戦すると宣言した。これは楽しみである。