立川吉笑 真打トライアル VOL.4
「立川吉笑 真打トライアル」VOL.4に行きました。ゲストは三遊亭白鳥師匠。吉笑さんが“三題噺の神様”と崇め、尊敬している師匠だ。
「丁稚騒ぎ」立川吉笑/「座席なき戦い」三遊亭白鳥/中入り/「粗忽の釘」立川談笑/「歩馬灯」立川吉笑
吉笑さんが三題噺に取り組みはじめたのは意外と最近で、2021年。ラジオ番組からのオファーがきっかけだった。それが、きょうのプログラムに「真打昇進披露興行が行われたら、一回は三題噺に挑戦したい」と書くまでになった。会の最初にお題をもらって、ガチンコで一席作って披露してみたいという。
なぜ、そんなに目覚めてしまったのか。そこに白鳥師匠の存在がある。初めて三題噺をやることになったとき、「自分はそこそこできるだろう」と楽観視していたそうだ。ところが、自分の普段の創作スタイルでは大変に難しいことが判った。
プログラムにこう書かれている。
藁にもすがる思いでお手本を探しているうちにたどり着いたのが白鳥師匠の三題噺群だった。どんなお題を与えられても、あの手この手で必ず高品質の噺に昇華してしまう技を『白鳥メソッド』と名付けて、夜な夜な、その仕組みの解明に時間をかけた。その結果、三題噺で重視すべきは「物語の推進力」と「ケレン味」、通奏低音としての「サービス精神」だと気づいた。そしてそれらは、僕がこれまで普段の創作では排除してきた要素でもあった。以上、抜粋。
つまり、吉笑さんがこの2年で三題噺に積極的に取り組むことによって、自分の創作領域がどんどん広がったということである。これまで「吉笑さんっぽい」と評されてきた自分の創作スタイルに、白鳥メソッドが加わることによって、強靭な羽根をもたらせてくれたという。
簡単に言うと、“白鳥メソッド”を学んで三題噺を創作することによって、「2年前の自分よりも今の自分の方が面白い」と胸を張れるようになったという…。それはすごいことである。
きょうの吉笑さんの一席目は「犬旦那」と「ぞおん」をくっ付けた高座だ。「ぞおん」は二ツ目初期から中期にかけての代表作と言える作品。それに三題噺で創作された「犬旦那」を同じ定吉が奉公する噺としてミックスすることで最高に面白い一席に仕上がった。ちなみに「犬旦那」は今年3月に渋谷らくごで吉笑三題噺五日間と称したチャレンジで、三日目に「犬」「ブッダ」「新人研修」で創作した作品で、その後「新人研修」の部分を削るなど改良を重ねて出来た噺だ。
一席目で三題噺に取り組みはじめたときのエピソードや、いかに白鳥師匠の創作能力がすごいかをマクラで熱弁しすぎて、持ち時間を大幅にオーバーしたために、二席目に「浜野矩随」を掛ける予定だったのが、急遽「歩馬灯」に変更になったのは残念だったが、「歩馬灯」も優れた代表作と言えるものなので、十分に楽しむことができた。
さあ、11月のVOL.5でラスト。毎回、談笑師匠が「もう真打でいいんじゃない?」とおっしゃっていて、おめでたいゴールは見えている。だが、気を抜かずに最終回を見事に飾って、「真打昇進決定」を見届けたい。