熱海五郎一座「幕末ドラゴン~クセ強オンナと時をかけない男たち~」

新橋演舞場で「熱海五郎一座 幕末ドラゴン~クセ強オンナと時をかけない男たち~」を観ました。この芝居の初日が5月31日。だが、翌日から舞台関係者が体調不良となり、休演。再開したのがきのう7日だから、僕は実質3日目を観たことになる。まずは大事に至らずに、公演が再開して良かった。

三宅裕司さんが座長を務める「熱海五郎一座」は、東京喜劇の伝承を謳って毎年新作を上演している。2004年の伊東四朗一座から数えて19年目、新橋演舞場シリーズとなってからは今回で9作目だ。コロナ禍がようやく一段落し、3年ぶりに声出し“爆笑”が解禁になったとプログラムにもあったが、難解なメッセージなどなく、兎に角“大衆的な笑い”にこだわった芝居を毎回見せてくれる。

毎回と言えば、女性大物ゲストを迎えて、喜劇に挑戦してもらっているのも特徴だ。新橋演舞場に進出してからでも、2014年沢口靖子・朝海ひかる、15年大地真央、16年松下由樹・笹本玲奈、17年藤原紀香、18年小林幸子、19年高島礼子・橋本マナミ、21年紅ゆずる・横山由依、22年浅野ゆう子。そして今回は元タカラジェンヌの檀れい、そしてももいろクローバーZの玉井詩織が出演である。

あらすじはこうだ。

高齢者ばかりで構成されたミュージカル劇団「シルバーガイズ」(三宅裕司・渡辺正行・ラサール石井・小倉久寛・春風亭昇太)は、幕末の京都を舞台に坂本龍馬と新選組が大暴れするミュージカルの稽古をしていた。だが、劇団のオーナーであるお嬢(玉井)が無情にも「劇団解散」を通告する。彼らとお嬢が口論から取っ組み合いの喧嘩をする最中、思わぬことから皆は慶応3年の京都へとタイムスリップしてしまう…。

劇団員たちは、偶然出会った坂本龍馬(東貴博)の暗殺を阻止。その危機に駆けつけた龍馬の妻・お龍(壇)は命の恩人である新選組の格好をしている彼らに感謝をする。すると、彼らも彼女の美貌にメロメロになってしまう。

やがて未来から来た劇団員とお嬢の存在は、本物の新選組や京都の町の人々に様々な影響を及ぼし、歴史は修復不可能な方向へと捻じ曲がっていく。果たして彼らは歴史を元に戻し、無事に現代へと帰還できるのか…。

歌あり、踊りあり、立ち廻りあり。元タカラジェンヌの壇さん、ももクロの玉井さんの助演はもちろんだが、まさにシルバー世代になった5人それぞれが老いを苦ともせずに楽しく奮闘している姿、そして笑いに対して貪欲な精神には拍手喝采である。同じシルバー世代の観客への応援歌とも言えるだろう。

座長・三宅裕司さんのご挨拶にもその意気を感じる。

「浅草の軽演劇的な笑いを無くしてはいけない」。伊東さんとの会話から伊東四朗一座が生まれ、その流れで熱海五郎一座の公演が始まりました。小学生とお年寄りが一緒に笑えるような大衆的な笑いでありながら、古くない今の東京で面白い喜劇を創りたいということで東京喜劇と言わせてもらいました。ですから、熱海五郎一座はストーリーも設定も役も感動的なシーンさえも笑いの為にあります。熱海五郎一座のテーマは沢山のお客さんに声をあげて大笑いして頂き、愉しんで頂いて、スッキリしてもらうことなんです。以上、抜粋。

コロナについてはまだまだ十分注意は必要だが、「皆で声を出して正々堂々と笑い合える世の中」が戻ってきていると思いたいし、コロナ前の状況に完全に戻ってくることを切願してやまない。