新宿末廣亭三月下席仲日夜の部(笑福亭羽光 主任)
新宿末廣亭三月下席仲日夜の部に行きました。笑福亭羽光師匠が末廣亭初主任、きのうまでの4日間、「土橋萬歳」「七度狐」「天神山」「不動坊」と本寸法の上方落語をハメモノで掛けていて、この芝居に対する意気込みが感じられる。ワクワクしながら、きょう伺ったところ、「はてなの茶碗」をしっかり演じて、素晴らしい高座だった。また、今席は前座時代にお世話になった神田鯉花さんの二ツ目昇進披露でもあり、これまたおめでたい。
「からぬけ」桂壱福/「ツッチュウ」笑福亭希光/奇術 小泉ポロン/「大名花屋」神田鯉花/「若さしか取り柄がないくせに」瀧川鯉八/音曲 桂小すみ/「四人癖」笑福亭里光/「いびきクラッシャー、明美32歳」春風亭昇々/コント コント青年団/「電話の遊び」三遊亭遊雀/中入り/「風呂敷」立川寸志/漫才 新宿カウボーイ/「棒鱈」春風亭昇也/「湯屋番」柳亭小痴楽/漫談 ねづっち/「はてなの茶碗」笑福亭羽光
希光さん、新幹線による自己紹介。突っ込み中毒の親分に対応するため、子分たちがボケをかますことに一生懸命になるのが愉しい。ポロン先生、高笑い。奥深き積みマジの世界。積みは罪?ブタがスイカになるの好き。
鯉花さん、壽二ツ目昇進。ハキハキとした若さ溢れる高座。源助とお花の恋物語をしっかりと読み、拍手喝采!鯉八師匠、尿管結石。聞かなきゃ良かったという、ばあちゃんが繰り出す悪い話が面白い。
小すみ師匠、圧巻!櫓太鼓キャンペーン、一音成仏で三味線をひっぱたく。薄暗き櫓太鼓や隅田川…負けるな一茶、これにあり。里光師匠、癖の治しっこ楽しい。やったらあかん、がやりたくなる。昇々師匠、通勤2時間。離婚が持ち上がるのは、夫のいびきが先か、それとも妻の昼寝が先か。
青年団先生、服部はフクブ?JKは女子高齢者の略。厚切りジェイソンとパックン。ガザ地区と足立区。遊雀師匠、鳴り物入り。芸者の鯉花さんの喉にうっとりする大旦那が愉しい。春雨、そしてせつほんかいな。お囃子さんの活躍があるのも、寄席の良いところ。
寸志さん、憧れの末廣亭へ。立川流という壁を乗り越えて、夢を果たして感慨ひとしお。横浜でエゲレス人を見てきたという亭主が急に帰ってきたが、酔っ払って、押し入れから新吉が出てきても平気なのが面白い。新宿カウボーイ、胸ポケットのペンは、実は温度計!
昇也師匠、セレモニーホール落語。十二カ月の田舎侍の部屋に乗り込んだ酔っ払いが…実は「風呂敷」の亭主とは!小痴楽師匠、江戸前。女湯がある!堪らないね!おあがりになって!激しい妄想の若旦那は漫画だ。ねづっち先生、侍JAPANと掛けて、割り箸と解く。日本(2本)は一つにまとまった。羽光師匠と掛けて、1でも2でも3でもないと解く。ろくでもない!
羽光師匠、マクラでモノの価値の曖昧さを表わす小咄。茶金さんの粋な計らいが素敵だと思う。一つ2文か3文の数茶碗になけなしの2両を払った油屋に対し、茶金の名前を買ってくれた、商人冥利に尽きる、と3両渡すところが流石京都で一番の茶道具の目利きらしくていい。
茶金さんが何度も首を傾げた、なぜか漏る茶碗。関白鷹司公が見たいと言って書いた一筆、清水の音羽の滝の落としてや茶碗もひびにもりの下露。そして、時の帝も見たいと言って、「はてな」と書いた箱。これらが付加価値となって、鴻池さんが千両で買い取ったというわらしべ長者のような、茶碗の出世階段が面白い。
この話を茶金さんが油屋にしたとき、油屋も素直に「これはあなたの人徳だ」と言って、半分の500両を受け取るのを最初は拒んだのも素敵。「こんなの貰ったら、人間が駄目になる」・・・、でもちょっとだけ間が空いて、「駄目になりたい!」と本音が出るところも可愛かった。
人間が出来ている茶金さんの貫禄と、欲に真っ直ぐな油屋の人間味、どちらも共感できるなあと思った素敵な高座だった。