大相撲春場所 霧馬山が見事な逆転優勝!
大相撲春場所は、関脇・霧馬山が優勝争いでトップに立っていた小結・大栄翔に対し、本割、優勝決定戦と連勝して、初の賜杯を手にした。
見事な逆転優勝だった。本割。大栄翔の激しいのど輪攻めで土俵際まで追い込まれながらも、下からあてがって土俵際で残し、突き落としで勝利を掴む。これで12勝3敗と並んで、決定戦に持ち込んだ。そして、決定戦。やはり大栄翔は激しい突き押しで攻めるも、霧馬山が粘り腰で踏ん張って突き落とし、大栄翔が僅かに早く土俵の下に落ちた。
大栄翔は21年初場所以来の賜杯に王手をかけながら、優勝がするりと手からこぼれた。押し相撲の力士は好不調の波が激しいとよく言われるが、今場所は7日目に若元春、10日目に豊昇龍に負けながらも、連敗をしなかった。12日目に優勝争いのトップに立ってからも、突き押しのパワーが増して、安定感すら感じる、相手を圧倒する一気に攻める相撲で多くのファンが優勝を確信した。だが、最後の最後で連敗してしまった。それも同じ霧馬山に、同じ取り口で。さぞ、悔しいだろう。
今場所は、横綱・照ノ富士が初日から休場、綱取りに挑んだ大関・貴景勝が怪我もあって7日目から途中休場、横綱大関が不在の場所となった。これは昭和になって以降、初めてのことである。それでも、コロナ禍以前と同じ100%の観客を入れての興行にもかかわらず、連日満員御礼が続いたのは、関脇、小結の三役陣、それに平幕の翠富士の奮闘があったからだ。
次の夏場所、霧馬山は大関取りの場所になる。先場所11勝、今場所12勝。昇進の目安は3場所三役で33勝と言われているので、十分に可能性がある。また、大栄翔も先場所は前頭筆頭だったが10勝、今場所は12勝なので、番付次第では大関という声も挙がってきてもおかしくないと思う。
さらに小結・若元春が11勝した。関脇・豊昇龍も10勝。さらに視野を広げると、三役に定着した琴ノ若や今場所前頭筆頭で10勝して復調の兆しを見せた正代だって再大関を狙えるチャンスである。群雄割拠の戦国時代。それぞれが切磋琢磨し、熱戦を展開すれば、大相撲が大きく盛り上がるチャンスだ。
今場所の三賞は、技能賞が霧馬山と大栄翔、敢闘賞が金峰山だった。金峰山は新入幕で11勝を挙げたので、妥当だと思うが、翠富士が敢闘賞を受賞しなかったのは首を傾げる。初日から10連勝し、12日目まで優勝争いのトップに立って、場所を盛り上げた功績は大きい。11日目以降、関脇や小結との対戦が組まれ、実力の違いを見せつけられたが、幕内最軽量であれだけの活躍を敢闘と言わずして何と言おうか。
十両も面白い場所だった。先場所、コンプライアンス違反で全休し、十両に落ちた幕内優勝の経験のある逸ノ城が貫禄を見せ、14勝を挙げて優勝。同じくコンプライアンス違反で6場所出場停止となり、三段目から復帰して先場所十両優勝を果たした元大関・朝乃山が優勝こそ逃したが13勝。NHKの取組動画再生ランキングは常に1位を記録する人気だった。この2人が来場所、幕内に復帰してどんな活躍を見せるかも楽しみだ。
そして、新十両の落合が10勝を挙げた。先場所、幕下15枚目格付け出しでデビューして幕下優勝して1場所で関取になった怪物は、来場所はさらにファンを沸かせる相撲を取ってくれるに違いないし、今年中に幕内、そして三役を窺う可能性を十分秘めている逸材だ。大いに期待したい。
最後に、若隆景が心配だ。13日目の琴ノ若戦で右膝を痛め、靭帯損傷、半月板損傷で3か月程度の療養を必要とすると診断され、休場した。7場所守った関脇の座を譲らなくてはいけないが、春巡業も休み、夏場所の出場も慎重に見極めたいという。大関の最有力候補だったが、残念だ。ここは焦らず、じっくりと治してから、再びの勇姿を見たい。大関に見合う相撲センスを持った力士だから、少しくらいの足踏みをしても、相撲ファンは待っている。