河竹黙阿弥作「弁天娘女男白浪」一幕二場

「壽初春大歌舞伎」第一部を観ました。「弁天娘女男白浪」は高い頻度で掛けられる人気演目だが、それだけのことはあって、やはり何度観て判っていても面白い。今回は浜松屋見世先の場で弁天小僧菊之助を愛之助、その供である南郷力丸を勘九郎が演じ、とても良かった。

「弁天娘女男白浪」浜松屋見世先の場

早瀬主水娘実は弁天小僧菊之助:片岡愛之助 若党四十八実は南郷力丸:中村勘九郎 浜松屋伜宗之助:中村歌之助 番頭太助:片岡松之助 鳶頭清次:中村又五郎 浜松屋幸兵衛:中村東蔵 玉島逸当実は日本駄右衛門:中村芝翫

前半は武家の娘になりすました愛之助&その供の若党四十八になりきる勘九郎の悪党コンビの強請り騙りぶりに目がいく。店の者は娘の美しい容姿に目を奪われ、これは上客だと丁重にもてなす。それも婚礼が決まった娘となると、贅沢な買い物をしてくれるのだろうとホクホクだ。その隙を見て、娘は緋鹿の子の小布を懐に忍ばせる。

それを見咎めた手代と番頭は「万引きだ!」と現行犯を取り押さえ、皆で取り囲み、打ち打擲。だが、これは悪党コンビの作戦だ。娘の持っていた品は山形屋の符牒が付いている。「よくも盗人扱いしたな!」と形勢逆転。四十八は「このお方は二階堂信濃守の家臣の早瀬主水の娘だ」と、嫁入り前の身に傷をよくも負わせたな!といきりたつ。

店の若旦那が謝り、出入りの鳶頭が仲介に入り、さらに主人が現れ、十両の金子を包むが、「そんな端金じゃ承知できない」と凄む四十八は百両を要求し、仕方なく主人は百両を渡す。

作戦成功!と思ったところで、玉島逸当と名乗る侍が登場。「二階堂信濃守の家臣に早瀬主水という者はいない」と言い、さらに娘の腕に刺青があり、実は男だと暴く。

最初は言い逃れをしていた悪党コンビだがいよいよ観念して居直るのが、後半の見どころだ。愛之助が、窮屈な女装を脱ぎ捨て、あぁやってられなよとばかりに元の男に戻るのが何とも可笑しい。そして、「知らざぁ言って聞かせやしょう」から始まる河竹黙阿弥独特の七五調の台詞が小気味良い。

知らざあ言って聞かせやしょう。浜の真砂と五右衛門が、歌に残こした盗人の、種は尽きねえ七里が浜、その白浪の夜働き、以前を言やァ江の島で 年季勤めの児ヶ淵、百味講で散らす蒔銭を 当に小皿の一文子、百が二百と賽銭の くすね銭せえだんだんに悪事はのぼる上の宮、名さえ由縁の弁天小僧菊之助たァおれがことだ!

元は江ノ島の岩本院の稚児、今では世上を騒がす盗賊と名の知れた弁天小僧菊之助だと正体を明かし、開き直る。仕方なく、店の主人は膏薬代として、二十両を渡して帰らせる。悪党コンビが、荷物持ちの役割を坊主に会ったら交代するなどと言って、鼻歌まじりにしめしめと店を後にする姿が何とも愉しい。

浜松屋を救った玉島逸当は、実は盗賊の首領の日本駄右衛門で、弁天小僧菊之助と南郷力丸はその一味だったというのも芝居ならではの設定だ。

第二場の稲瀬川勢揃いの場は、揃いの小袖を着た盗賊5人が並び、さながらゴレンジャーという様子は、まさに動く錦絵で歌舞伎らしい。

日本駄右衛門:中村芝翫 弁天小僧菊之助:片岡愛之助 忠信利平:市川猿之助 赤星十三郎:中村七之助 南郷力丸:中村勘九郎