【六月大歌舞伎 第一部】「猪八戒」澤瀉屋の家の芸が約半世紀ぶりによみがえった!
歌舞伎座で「六月大歌舞伎 第一部」を観ました。(2022・06・16)
澤瀉十種の内「猪八戒」。大正15年8月、歌舞伎座において、二世猿之助の猪八戒、六世大谷友右衛門の霊感大王、八世市川八百蔵(八世市川中車)の孫悟空、二世市川小太夫の沙悟浄などの配役で初演された。当時レビュー全盛の時代で、竹本や長唄とともに洋楽の演奏による画期的な作品だったが、昭和6年12月に東京劇場で上演されて以来、本興行では上演が途絶えていた。
そして、六世藤間勘十郎(二世勘祖)の振付、十世竹澤彌七の作曲で義太夫による舞踊劇として、昭和43年6月、歌舞伎座での当代猿翁による自主公演「第三回春秋会」で復活上演。昭和50年の「澤瀉十種披露公演」を経て、この度の公演となった。
「西遊記」を素材にした本作品の舞台は「通天河」と呼ばれる川の畔。この地に祀られている霊感大王に人身御供を差し出さねばならず、今年は一秤金という娘にその白羽の矢が立つ。天竺に向かう三蔵法師一行が、一秤金の家に宿を借りていたことから、猪八戒がその身代わりになる。童女に成りすました猪八戒の振りが興味深い。
続いて、供物の酒を飲み始めた猪八戒は、三蔵法師の弟子になった経緯をはじめとする身の上を語る。
そこへ霊感大王が現われ、お互いに酒を飲み、うち興じる様子を踊りで描くうち、猪八戒の正体が霊感大王の知るところとなる。実は大王は通天河に住む妖魔で、その正体を顕し、両人は激しく戦い始める。そこに孫悟空と沙悟浄、大王に加勢する紅少娥と緑少娥が加わって見せる立ち廻りもアクロバティックで見ごたえがある。
スピード感あふれる澤瀉屋の家の芸を楽しんだ。
童女一秤金実は猪八戒:市川猿之助 孫悟空:尾上右近 沙悟浄:市川青虎 女怪緑少娥:市川笑三郎 女怪紅少娥:市川笑也 霊感大王実は通天河の妖魔:市川猿弥