「人生はうまくいかない。だから面白い」…スヌーピーが教えてくれたもの(1)
NHK総合の録画で「アナザーストーリーズ スヌーピー最後のメッセージ~連載50年 作者の秘めた思い」を観ました。
世界中で愛されている頭でっかちな犬。でも、ただの犬ではない。「上を見続けるんだ…それが人生の秘訣さ…」「戦争は泥沼だ…どこにも希望はない…」。あり余る想像力でいつも何かを夢見ているスヌーピーは、1950年にアメリカの新聞で連載がはじまった漫画「ピーナッツ」のキャラクターだ。
主人公は飼い主のチャーリー・ブラウン。野球が大好きだけど、いつも負けてばかりの少年だ。ほかにもルーシー、ダイナス、シュローダーら、一癖ある個性的な子どもたちがユーモラスで深みに溢れる言葉を発する。それはまさにアメリカの人々にとって魂とも言える漫画だった。
2000年2月13日、「ピーナッツ」の連載が終った。作者はチャールズ・M・シュルツ。たった一人で「ピーナッツ」を描き続け、その数は実に17897作。50年間、毎日新聞を彩っていた連載が突然終わったとき、アメリカは何を失ったのか。世界が愛した「ピーナッツ」、その不思議な魅力を紐解いた番組だった。
「同時に2人の子を愛するなんて可能かなあ」「クッキーが二つあったのを思い出すよ。チョコチップとピーナッツバターでね。僕は2つとも愛したよ」。このちょっと力の抜けた可愛らしい漫画は世界75か国で愛され続けている。かのバラク・オバマは言った。
何百万のアメリカ人と同様、私も「ピーナッツ」と共に成長した。でも、まだ卒業していない。(The Complete Peanutsより)
アメリカ人にとって登場人物のキャラクターは世代を超えて親しまれている。例えば、主人公のチャーリー・ブラウンは何をやっても失敗することになっている。率いる野球チームはちっとも勝てないし、凧を揚げれば必ず引っ掛かる。その友達のルーシーはちょっと意地悪で、ズケズケ言う女の子。彼女が押さえるフットボールをチャーリー・ブラウンは蹴れたためしがない。ほかにも、おもちゃのピアノで大人顔負けの演奏ができる天才・シュローダ―や哲学的だけど毛布を手離せないライナスなど、子どもだけの世界が描かれている。
50年にわたる連載をたった一人で描き上げたチャールズ・M・シュルツ。彼はこの漫画にどんな思いをこめたのか。
アメリカ、カリフォルニア州サンタローザ。シュルツが長年「ピーナッツ」を描き続けた町だ。至る所で、あのキャラクターたちを見かける。シュルツが使ったスタジオは今もそのまま、「チャールズ・M・シュルツ・クリエイティブ・アソシエイツ」として残されている。
シュルツのアシスタントを務めたペイジ・ブラドック。シュルツ亡き後も「ピーナッツ」のキャラクターを描くことが許されている貴重な存在だ。
スヌーピーの頭はピーナッツなのよね。2つの円があって、つながっている。それで体はまるでボウリングのピンのような形で、耳があって、鼻があって。簡単そうに見えるけど、実はとても難しいの。私も3回は描かないと、納得するものが描けないんです。
番組の第一の視点は、アシスタントが間近で目撃した「ピーナッツ」創作の秘密。
「ピーナッツ」の歴史を簡単に辿る。1950年10月2日。連載開始は今から71年前だ。記念すべき第1話。
「あ、いい奴のチャーリー・ブラウンだ」「まさにいい奴、ご立派!」「本当にいい奴だ」「つまり、ものすごく嫌な奴」。
いい奴なんだけど、いい奴すぎて、何かむかつくという、独特の描写。ちなみに、地方新聞7紙からの地味なスタートだった。
つづく