「人生はうまくいかない。だから面白い」…スヌーピーが教えてくれたもの(2)
NHK総合の録画で「アナザーストーリーズ スヌーピー最後のメッセージ~連載50年 作者の秘めた思い」を観ました。
きのうのつづき
スヌーピーは第3話から登場。この頃は四足歩行で、セリフは一切なかった。当時は漫画といえば、スーパーマンなど強いヒーローが悪を倒す物語が定番。そんな中、静かな漫画は子どもだったペイジの心に突き刺さったという。
大好きでした。電車のおもちゃを見ている話。あれは最高。
ペイジの印象に深く残っているのが、この回、友達の家でチャーリー・ブラウンは彼のおもちゃをながめている。広々と敷き詰めたレールの上を電車が何台も走っている。信号や線路の分岐もある豪華なセットだ。家に帰って、今度は自分のおもちゃをながめる。電車が一台だけ回っている。
4コマ目の悲しそうな目が印象に残りました。複雑な感情が力強く迫ってくる漫画です。当時の漫画は冒険モノが多くて、海賊とか戦士とかばかり。その中で人の感情を取り上げるこの漫画はとても特殊だったんです。驚きでした。
そして、連載6年目。「ピーナッツ」を一躍有名にしたのが、このエピソード。「凧食いの木」(1956・4・12~20)だ。凧が木に引っ掛かったチャーリー・ブラウン。怒って意固地になる様子が8日間、全く同じ構図で描かれた。
「凧が木に引っ掛かったの?」「そう」「下ろせないの?」「そう」「どうするつもり?」「何もしない」。怒った彼は「一生ここで立っているつもりだよ」と宣言する。
翌日再び友達が訪ねてくるが、チャーリーは頑として動こうとしない。すると、今度はルーシーが「バカな凧!」と叫びに来たり、「あなたの背が高かったらよかったのに」とわざわざつぶやきに来たり。そして8日目、ついに雨が降り始める。
「チャーリー・ブラウン、雨よ。濡れちゃうわよ」「あのバカ凧も濡れてる?」「ずぶ濡れよ」。あの憎たらしい凧もずぶ濡れになっていると聞いて、なぜかニンマリするチャーリー・ブラウン。この作品は評判になった。
一方、スヌーピーは二足歩行に進化し、暢気な想像力で、20年かけて国民的な人気者になっていく。その人気を証明したのが、あのアポロ計画。何と、スヌーピーも宇宙へ。月面着陸船にスヌーピーというコードネームが付けられるほどの人気となったのだ。
(月面着陸船)「チャーリー・ブラウン、こちらヒューストン。ミッション完了だ」(司令船)「おめでとう、スヌーピー」
1995年。32歳のペイジはプロの漫画家になっていた。が、ある日。
ある漫画のイベントに参加したとき、休憩時間にキャッチボールをしているシュルツさんを見かけたんです。「あ、シュルツさんだ」と思って、スケッチブックを抱えて階段に座っていると、彼が私のところに来て座りました。そして、私の漫画を覗き込んで、話しかけてきたんです。
そして、これがきっかけで、ペイジは1999年にアシスタントに採用された。ペイジが最も驚いたのはシュルツの風変りすぎる人柄だった。
彼は雑談しません。深い話をするか、会話をしないか。天気の話なんかはしない人でした。一緒にディナーに行ったときは、面白かったです。彼は皆が会話していても、ずっと黙って考え事をしているのです。で、とても意味のある面白い一言をいきなり言うんです。彼は頭の中でオチの一言をずっと考えていたのです。
「時々あなたはどうして犬なんかでいられると思うわ」「配られたトランプで勝負するしかないのさ。それがどういう意味であれ」
この最後のコマこそ、シュルツの命だった。だが、どうやってシュルツは毎回、テーマを見つけていたのか。
一度、彼に「あなたは『ピーナッツ』で何を伝えようとしているの」と訊いたことがあります。彼の答えは「皆が子供の頃に体験した“失敗や儚さ”を伝えたかった」と。世の中の残酷さみたいな、切なかったり、悔しかったりする感情は地球上の誰もが味わう感情です。そんな気持ちを伝えたいと彼は言っていました。
つづく