【三月大歌舞伎 第1部】「新・三国志 関羽篇」コロナ禍でも、夢見る力を忘れない
歌舞伎座で「三月大歌舞伎 第1部」を観ました。(2022・03・08)
「新・三国志 関羽篇」。市川猿之助宙乗り相勤め申し候である。1999年に新橋演舞場で横内謙介脚本・三代目市川猿之助(現・猿翁)演出で初演されたスーパー歌舞伎「新・三国志」の再演。当時、演劇界で大きな話題となったときのことは存じ上げないが、その後「新・三国志Ⅱ」「同 Ⅲ」とシリーズ化され、三代猿之助のスーパー歌舞伎の象徴になったのだという。
プログラムに猿翁さんはこう書いている。
このシリーズで私にとっての演出のノウハウも確立できたと思う。それは“大いなる二番煎じ”ということである。成功した演出は堂々とまた使えばよい。江戸期から歌舞伎は常にそうであったと再確認することができた。
また、脚本の横内謙介さんはこう書いている。
初演時、劉備玄徳が女という設定が賛否両論を生んだものですが、暴力が中心の任侠モノにしないという、猿翁さんの強い思いがあって実現した冒険でした。その後の、女性の立場を巡る世界の変わり様を考えると、その視点は未来を見据えた慧眼であったと思います。もし男性目線の世界観だけで創られていたら、この時代に上演すべき物語にはならなかったかもしれません。
そうなのだ。僕はこの芝居で「劉備が実は玉蘭という女性」という設定に驚愕した。劉備を笑也が演じている様子を見て、え!?と思い、関羽を演じる猿之助とラブロマンスのような展開に最終的になることに、大変な興味を覚えた。
劉備、関羽、張飛の三人が義兄弟の盟約を結ぶ「桃園の誓い」を仲立ちにした、関羽と劉備がとの恋を描きながら、「新・三国志」シリーズのテーマである「夢見る力」をアピールしているのだ。
“美髯公”と呼ばれ、中国史上一、二を争う関羽と、女性であることを隠し、争いのない、人々が幸せに暮らす国の創出を夢見る劉備の儚い恋が新鮮だった。
プログラムで猿之助はこう、書いている。
この度、二十数年の歳月を経て、歌舞伎座でスーパー歌舞伎の「新・三国志」が上演できることに深い感慨を覚えずにはいられません。新作が古典になるには、時間も不可欠な要素であるということを考えさせられます。
初演の折には、京劇俳優によるアクロバット、舞台一面の本水の滝、ロシアで収録されたオーケストラの音楽など、大スペクタクルで話題となりました。今の厳しい状況とは隔世の感です。
今回も様々な制約との闘いですが、決して諦めることなく、この芝居のテーマ“夢見る力”を胸に、出来る限りの力を尽くして臨みます。
当代猿之助が書いたように、一日も早くコロナ禍前の状況に世間がなって、エンターテインメントが心置きなく楽しめる日常が戻ってくることを祈るばかりである。