落語協会黙認誌「そろそろ」創刊!噺家が噺家を取材し、噺家が原稿を書く落語ファン必携の雑誌だ。

落語協会黙認誌「そろそろ ′22年号 01」を読みました。

昔、落語協会誌「ぞろぞろ」というのがあった。よく覚えている。鈴本演芸場とか、寄席に置いてあって、自由にお取りください、みたいな感じだったと記憶している。1988年11月に創刊だそうである。結構、楽しい読み物があって、広報誌にしては随分と充実していた。

休刊になったのは2000年のはず。たい平師匠と喬太郎師匠が二人で真打に昇進するときに、番組取材をして、この「ぞろぞろ」の編集会議(落語協会の二階でやっていた)を撮影させて頂いたのを覚えている。喬太郎師匠(当時は二つ目)も編集部員だった。

その「ぞろぞろ」のオマージュが、この「そろそろ」だ。柳家小はださんが言い出しっぺで、編集長になり、同期の林家彦三さんが出版部長という肩書になっている。やっぱり後ろ盾が必要と、五明楼玉の輔師匠に頼んだら、「編集長とかそういう責任者的なものは嫌だよ」と言われ、「無責任者」という肩書で、結構制作に携わって応援しているのが可笑しい。

出版とか、編集とかは素人で、本業は噺家という若い人たちがワイワイガヤガヤと作っている感じが伝わってきているのが、とても良い。何せ、取材対象はほとんどが楽屋で顔を合わせている先輩、後輩だから、頼みやすいというのもあるだろうが、噺家同士だからこそという視点をもって企画を立てられるのが利点だと思う。

なんてったって、巻頭グラビアがペペ桜井先生というのが楽しかった。外部の人間ではとても訊けないようなことも、切り込んだりして、こういう編集姿勢を続けてほしいと思う。

今年3月から真打に昇進した4人にも各々インタビューしているのだけれど、これも演芸記者とは全く違う視点で訊いているから、とてもユニークな内容になっている。東京かわら版の3月号にも同様の新真打インタビューがあるが、これと比べて読むともっと面白い。どちらも面白いのだが、噺家が噺家にインタビューするとこうなるか!というのが良い。

東京かわら版と言えば、その東京かわら版編集部に行って、雑誌編集の大先輩にインタビューするスタイルがこれまた、楽しい。普段、取材する側と取材される側が逆転することによって、大変に興味深い内容になっている。かわら版の佐藤編集長に逆に質問されたりして、和気あいあいぶりが楽しい。

ちなみに、あくまでも落語協会「黙認誌」であり、制作費などは一切協会から出ていない。プロの噺家だから、こういう言い方も変かもしれないが、同人誌的な意味合いが強い。でも、内輪受けにとどまっておらず、きちんと落語ファンが楽しめる雑誌になっているから良いのだ。

次号のメドは立っていないというが、1冊1000円。皆で買って、資金面のメドを立てて、年に2回くらいは出してもらえると嬉しいなあ。皆で読もう!落語協会黙認誌「そろそろ」!応援しています!