【初春歌舞伎 南総里見八犬伝】揺るぎない圧倒的な菊五郎劇団の配役で、華やかな舞台を楽しんだ

国立劇場で「初春歌舞伎 南総里見八犬伝」を観ました。(2022・01・17)

八犬伝と言えば、子供の頃に毎日欠かさず夕方のNHKテレビで観た人形劇「新・八犬伝」である。♬いざとなったら珠を出せ~力が溢れる~というテーマソングは今でも耳に残っている。で、その元となった滝沢馬琴の書いた「南総里見八犬伝」の歌舞伎化である。

プログラムによれば、1947年に六代目尾上菊五郎の監修で当時の若手を中心に上演されたのが今回の原典だそうだ。尾上菊五郎(七代目)を座長とした菊五郎劇団にとって「存在証明」とも言える切り札の演目だと、朝日新聞の劇評で明星大学の村山湛教授が書いていた。

僕は2015年に、やはり国立劇場の初春歌舞伎で菊五郎劇団の「南総里見八犬伝」を観ているが、今回はコロナ禍のために短縮バージョンだったのが残念。だが、「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」それぞれの珠を持つ八犬士が活躍する華やかな舞台が面白かった。

座長の菊五郎が道節で、出番は少ないがずっしりとした貫禄を示している。目を惹くのは、やはり菊之助の犬塚信乃と松緑の犬飼現八だ。「芳流閣」の屋根の上で若武者同士が勇ましく戦う。お互いに譲らぬまま組んず解れつする様子は見どころだろう。

彦三郎の犬田小文吾、坂東亀蔵の犬川壮助、唐装束を身にまとって女田楽として妖美を振りまく時蔵の犬坂毛野も良かった。尾上左近は前回(2015年)に勤めた犬江親兵衛は小学生の頃だったというから驚く。その成長ぶりを見るのも嬉しい。

八犬士以外では、梅枝の蟇六娘浜路、品位とふくらみを示す楽善の足利成氏など、村山教授が「揺ぎない座組は圧倒的」と表現するのに、頷く。

お正月興行は、こういう理屈抜きに華やかに魅せてくれる歌舞伎がいい。そんな思いに浸った芝居だった。