【浪曲映画祭】「サラリーマン清水港」(1962年・東宝)清水次郎長伝を現代のパロディにした森繫久彌の社長シリーズの傑作!
ユーロライブで「浪曲映画祭 情念の美学」四日目を観ました。(2021・06・28)
「サラリーマン清水港」(1962年、松林宗恵監督)
東宝の喜劇「社長シリーズ」の第12作目である。清水次郎長伝をサラリーマンものに翻案した正続二部作の正篇だ。
きのう書いた「清水港は鬼より怖い」が1952年なので、その10年後の作品であるが、いかにこの時代に映画文化が花開いて、成長著しかったかがよくわかる。
「鬼より怖い」も次郎長伝をモチーフにしているが、時代設定は江戸で、ドタバタ喜劇ではあるが、時代物になっている。モノクロ映画である。今でも十分に愉しめるが、僕の好みで言うと、時代を昭和に翻案した「サラリーマン清水港」の方が好きだ。
パロディーとしてしっかりと登場人物を「次郎長伝」に当てはめていながら、「社長シリーズ」のサラリーマン物としても実によく出来た脚本と演出である。これはすごい。
東京オリンピックの2年前。テレビよりもまだ映画が大衆文化として根付いていたことがよくわかって、1964年生まれの僕は思わず拍手喝采した。
あらすじはこうだ。
株式会社清水屋といえば一流の酒造会社である。清水屋が今日あるのは社長の山本長五郎(森繫久彌)一人が偉かったのではない。その名も清水二十八人衆と知られた、口も八丁手も八丁の模範社員が控えていたからである。
商売仇である黒駒醸造はブラック・ホースというウィスキーを新商品に。これに対抗すべく清水屋はマウント・フジなる新酒を試作した。そんなところへ中国のバイヤー邱六漢(フランキー堺)が、酒の大量買入のために日本にやってきた。専務の大柾(加東大介)、工場長の小政(三木のり平)、秘書課長石松(小林桂樹)の三人は、邱六漢を芸者〆蝶(新珠三千代)の誕生パーテーに招待した。だが、清水屋の特級酒は邱六漢に合成酒とけなされてしまった。
あわてた長五郎は、銀座のバー“千代子”(草笛光子)に河岸をかえ、マウント・フジを持ち出したが、一足先に運ばれたブラック・ホースに邱六漢は軍配をあげた。
清水屋挽回に残された機会は、創立三十周年記念行事でその総力を示すことだった。清水港をあげての祭典も石松のガール・フレンド妙子(藤山洋子)が、追分(夏木陽介)と婚約したことから、石松の泥酔となり、会はメチャクチャとなってしまった。しかし、ヤケクソとなった石松の飲む焼酎をなめた邱六漢の目が輝いた。邱六漢はこの焼酎の大量契約を申し込んできた。
清水の二十八人衆は原料の乾し芋を仕入れに四国に急行した。だが、社長の長五郎は〆蝶の誘惑をうけて大阪でストップ。金比羅代参のために一足先に到着した石松を待っていたのは黒駒に買収されたイモ会社の社長・都田吉兵衛(東野英治郎)だった。
黒駒のワナにかかって禁酒を破った石松は、都田の寝返りを怒って鉄拳をふるってしまった。一大事の電話をうけて都田の家にかけつけた長五郎をみて、吉兵衛の妻時子(一の宮あつ子)は首をかしげた。吉兵衛は長五郎と逢うということで家をあけていたのである。吉兵衛は時子にさんざん油を絞られた。時子と娘京子(司葉子)の口添えで、都田の芋も長五郎に売り渡されることになった。遥かに見はらす富士の山。清水屋は今日も日本晴れだが、大柾、石松の子分達は、親分の浮気未遂の決算を、蝶子(久慈あさみ)に報告すべくテンテコ舞いであった。