あさひ・美馬二人会 吉原あさひ「お菊の皿」、そして 熟したふたり 一龍斎貞寿「小さな恋のメロンディ」

あさひ・美馬二人会に行きました。吉原あさひさんが「手紙無筆」と「お菊の皿」、鈴々舎美馬さんが「エステサロン」と「かぼちゃ屋」だった。
あさひさんの「お菊の皿」。お菊が“お屋敷アイドル”になる演出が面白かった。プロモーターが興行を打つと、最前列にはいち早く前売り券を購入して、「お菊命」と書かれた鉢巻をした親衛隊が、「俺を殺してくれ」と叫んでいるという光景を想像するだけで可笑しい。お菊ちゃんには饅頭や団子が差し入れされ、最近ではふっくら体型になって井戸から出るのに難儀しているという…。顔色も良いというのは幽霊の常識を覆していて良い。
興行の演出もすっかりイベントと化して、陽気な鐘が鳴った後、「本日は御来場、誠にありがとうございます」という場内アナウンスが流れる。そして、いよいよお菊ちゃん登場。「みんな!来てくれてありがとう!」の後、コール&レスポンス。「葵の御紋は」「10枚組!」「数えてみると」「9枚!」「恨めしいのは」「鉄山殿!」。そして、「みんなのアイドル、お菊だよ!お皿、数えちゃうよ!」に、「L、O、V、E、お菊ちゃん!」。そして、1枚、2枚、3枚…と観客と一緒に皿を数えるお菊ちゃんが笑える。
そして、お菊ちゃんの愚痴。「みんなに会えて嬉しかった。でも、こう毎晩毎晩じゃ疲れちゃう。休みたいのに、興行主が許してくれないの。休みたいのに、休めないなんて、寄席の前座じゃないんだから!」。というわけで、この日は二日分の18枚を数えたのか!アイドルお菊ちゃんの可愛らしい造型が面白かった。
「熟したふたり~茜・貞寿二人会」に行きました。
「木村又蔵 清正との出会い」一龍斎貞昌/「秋色桜」リレー 一龍斎貞寿~神田茜/「銭湯の節」柳家喬太郎/中入り/「小さな恋のメロンディ」一龍斎貞寿/「いじめていじめて」神田茜
貞寿先生の「小さな恋のメロンディ」は茜先生の作品。初恋の部分は茜先生の要望で貞寿先生の体験に置き換えたのだそう。平凡な毎日を過ごすOLのタカハシサナエ、29歳は燃えるような恋をしたいと、社長のことを好きになろう!と思いつくのだが…。
サナエは小学校時代にヤマモトナオユキ君とヤギの飼育係をしていた。大変だったのは「乳搾り」で、サナエはヤマモト君と協力して実行、その甲斐あってか二人は仲良しになった。だが、中学生になると、ヤマモト君は背が高くなり、バスケットボール部でレギュラーとなり、女子の人気を得る。サナエは密かな恋心を抱き、ヤマモト君のお弁当を開けてふりかけをかけたり、ロッカーにあるジャージを取り出して洗濯し、自分の部屋で陰干しをしたり…そんなストーカーのような行為をすることで、自分の気持ちを満たしていた…。
だが、中3の卒業旅行のとき、ヤマモト君がデザートに出たメロンを皮が薄っぺらくなるまで果肉を食べ尽くし、他の生徒のメロンの余りも含めて残った汁をかき集めて、種と一緒に飲み干した。その姿を見て、百年の恋もすっかり醒めてしまった!
そして、29歳のサナエは社長と取引先から貰ったメロンを食べることになるのだが、なんと社長は先割れスプーンを握って一心不乱にメロンの果肉を削いでいる。そんなに食べないで…と思うほど、メロンの皮がペラペラになるまで果肉をこそぎ取っている。最後は水を汲んで、その中にメロンの残骸を投入し、「メロンジュースだ!」と言って、ジュルジュルゴクンと飲み干した。
ああ、中学時代に見たヤマモト君と社長の醜態がオーバーラップし、「さようなら、社長さん」とサナエは心の中で叫び、甘酸っぱい恋の夢は砕けるのだった。ネガティブな茜先生の作品をポジティブな貞寿先生のカラーに見事に染めた秀作だった。

