六月大歌舞伎「盟三五大切」

「六月大歌舞伎」夜の部に行きました。「華舞於河賑 俄獅子」と通し狂言「盟三五大切」の二演目。
「盟三五大切」。薩摩源五兵衛を中村勘九郎、船頭笹野屋三五郎を尾上松也という組み合わせのAプログラムを観た。三五郎の女房の妲妃の小万は中村七之助。大南北と呼ばれる四世鶴屋南北の筆らしく「忠臣蔵」のエッセンスを綯い交ぜにしたストーリー展開が面白い。
三五郎は塩冶家に縁のある父徳右衛門に勘当された千太郎で、今は船頭をやっているが、父親が塩冶家のために百両を必要としているのを知って、勘当を許してもらおうと金策する。芸者勤めをしている女房の小万に大金を注いでいる熱心な客が源五兵衛で、そこから巧いこと百両を巻きあげようという魂胆だ。
源五兵衛は実は元塩冶家家臣の不破数右衛門というのも、この狂言のポイントで、御用金三百両紛失の咎で浪人の身になっている。元主君が高野師直へ刃傷に及び切腹したが、高野家に仇討しようと考えている塩冶家の忠臣たちに仲間入りをしたいという名目で伯父の富森助右衛門に百両を調達してほしいと頼んだが、その金で小万を身請けしたいと考えていることが、話を厄介にしている。
二幕目はまさに、源五兵衛が小万恋しさゆえに、五人を殺してしまうという陰惨な場にしてしまう。深川二軒茶屋の伊勢屋の座敷で、賎ヶ谷伴右衛門が小万を身請けする話がまとまろうとしている現場に、三五郎が源五兵衛を連れて来る。源五兵衛は助右衛門から受け取った百両を差し出し、「俺が身請けする」と言い出す。だが、これは三五郎たちの作戦で、「小万は俺の女房」だと明かし、伴右衛門も実はごろつき勘九郎という三五郎の一味、全ては源五兵衛から金を巻き上げるための芝居であった。
その晩。源五兵衛を騙した三五郎・小万グループが眠っている、内びん虎蔵の家に源五兵衛が現れ、五平や勘九郎といったごろつき仲間を次々と斬っていく。だが、運良く三五郎と小万は難を逃れ、逃げ延びる。
大詰第一場の四谷鬼横町の長屋。かつて塩冶浪人の民谷伊右衛門が住んでいて、夫の伊右衛門に殺された妻のお岩の幽霊が今も出るという物件に、三五郎と小万が、里親に抱かせた我が子とともにやって来て、ここに住むことを決める。ここで三五郎と小万の運命がそれぞれに変わるところが興味深い。
三五郎の父の徳右衛門で、了心と名乗る男が現れる。了心は塩冶浪人の不破数右衛門の家来で、数右衛門が仇討に加えてもらえるように百両の金の工面に腐心していた。三五郎はこの男が父であることを判っているから、素直に百両を手渡す。そして、了心は勘当を許す。
さらに、この部屋に以前住んでいた高野家出入りに大工が持っていた高野家屋敷の絵図面が見つかる。これを了心から源五兵衛、すなわち数右衛門に百両とともに渡すことになる。また、この長屋の大家・弥助が小万の兄の土手平という悪党ということも判り、その腕の刺青から、塩冶家に御用金を盗み出した盗賊だと知れて、三五郎が殺す。三五郎は最終的に愛染院で出刃包丁を腹に突き立て、「源五兵衛が主筋の数右衛門であることを知らず、金を騙し取った罪滅ぼしに、全ての罪を引き受ける」と申し出、源五兵衛に仇討に加わるように願う。三五郎は結果として、源五兵衛の味方になったわけである。
一方、小万は源五兵衛の敵として終わる。小万の腕の彫物が「五大刀」から「三五大切」になっていた裏切り者として、源五兵衛に斬られてしまう。討ち落とした小万の首を源五兵衛は愛染院に持ち帰り、首を前に食事をする場面は不気味である。源五兵衛は小万のことを一人の女性としては愛していたということなのか…。
複雑に絡み合った鶴屋南北独特のストーリー展開は山場も多く、大変に面白いエンターテインメントだと思った。


