【アナザーストーリーズ】“覚醒前夜”の大谷翔平~同僚たちが見たSHOHEI~

NHK―BSで「アナザーストーリーズ “覚醒前夜”の大谷翔平~同僚たちが見たSHOHEI~」を観ました。
50ホームラン、50盗塁のフィフティーフィフティー。ワールドシリーズ2連覇。大谷翔平の活躍はものすごい。今年もドジャースで二刀流として活躍している。だが、今日の大谷の活躍はドジャース移籍前のエンジェルスでの5年間があったからこそであるということがよく伝わってくるドキュメンタリーだった。
2017年にエンジェルスに入団した大谷をずっと以前から目を付けていたのが、エンジェルスのジェネラルマネージャーだったビリー・エプラーだ。イチローや黒田が在籍していた名門ヤンキースのGM補佐をしていたビリーは、2015年にエンジェルスのGMに就任する。ビリーはそれ以前から花巻東高校にいた大谷という逸材に気づいて、毎年のように来日して接触していた。だが、大谷は日本ハムに入団した。
2017年に大谷がメジャーリーグに挑戦することを宣言。27球団が名乗りを挙げた争奪戦の結果、ビリーは大谷獲得に成功する。「すべてをゆっくり進めよう。今、この時間に集中しよう。そのために私はショウヘイを支え、全力を尽くす」と意気込んだ。まずはメジャーへの順応が必要だった。
2018年のオープン戦。投手として登板すると、制球が甘く、ワイルドピッチとホームランで失点するという苦いデビューだった。打者としては13打席連続無安打。期待はため息に変わった。メディアは「スイングに欠陥がある」「メジャー昇格には疑問」と書きたて、マイナーリーグから始めるべきとの論調が主流だった。ロッキーズ戦で1イニング7失点を喫すると、ビリーはロッカールームにひきこもった大谷を小部屋に呼び、「雑音に惑わされるな。俺がしっかり支える」と励ました。
打撃不振の原因はフォームにあった。メジャーリーグの投手は小さなモーションから速球を投げこむ。ゆえに、大谷はタイミングをとれずに苦しんだ。打撃コーチは片足を大きくあげる大谷を「ヒールリフト」と呼ばれる足を僅かにあげて最小限の動きで打つ打撃フォームに修正する提案をする。オープン戦の成績は防御率27.00、打率1割2分5厘。実力不足は明らかだった。
だが、大谷には「執着心」があるとビリーは評価する。垂直跳びの数字が平凡な記録だったが、1ヶ月後には28センチ高く跳べるようになっていた。大谷に訊くと「動画で研究した」という。たかが垂直跳びだが、その研究熱心に驚いた。
ビリーは「ショウヘイをメジャーでデビューさせる」決断をする。何かあれば、「私が責任をとる」と選手たちに言った。大谷の意欲、決意、身体能力、意志、目的意識…これらに賭けたのだ。シーズンが開幕したホームゲーム第1戦のガーディアンズ戦で初打席でホームランを打つ。ヒールリフトに改良し、見事にメジャーに順応した結果がすぐに出たのである。
大谷の3年目にジョー・マドンが監督に就任する。2008年にレイズをアメリカンリーグで初優勝に導いた闘争心の強い名将である。大谷は2018年6月に右肘に異変を感じ、シーズンオフに靭帯損傷のためトミージョンソン手術を受けた。2020年の大谷の成績は防御率37.80、打率1割9分。マドンは「すべてが狂っていた」という。そして、選手には5つのレベルがあると言った。レベル1はプロになれて幸せ、2は生き残れるか不安、3はやっていける安心、4はたくさん稼ぎたい。だが、大谷はレベル5の「勝ちたい」にあった、と。
低迷に終わった3年目のオフ。マドン監督は起用方針を見直す。これまでは登板日前後は打撃練習などはさせないというものだったが、マドンは大谷に「ルールは存在しない」と告げる。つまり、自由を与えたのだ。2021年が開幕すると、マドン監督は先発投手で2番打者というリアル二刀流を実行。すると、大谷は投手として9勝2敗、防御率3.18、打者としてホームラン46本、100打点と投打ともに大活躍。アメリカンリーグのMVPに選ばれた。
そして、大谷は2023年、ドジャースへの移籍を発表する。エンジェルスのチームメイトは「ワールドシリーズを戦いたいという、立派な決断だ」と讃えた。
2025年10月17日。ナショナルリーグ優勝決定シリーズのブルワーズ戦。大谷は6回無失点、10奪三振。ホームラン3本の大活躍。ブルワーズの特別アドバイザーをしていたビリー・エプラーはその現場を目撃し、「ショウヘイにやられるなら、仕方ない。本望だ」と語るインタビューが番組最後に流れているのが印象的であった。
2026年のメジャーリーグも大谷翔平の投打にわたる活躍から目が離せない。だが、そこにエンジェルス時代からの努力研鑽とともに、指導者やチームメイトの支えがあったことは忘れてはならない。

