熱海五郎一座「仁義なきストライク」、そして やっぱり!こしら!!いちのすけ!!!春風亭一之輔「かぼちゃ屋」

熱海五郎一座「仁義なきストライク~弾かれた栄光と約束のテンフレーム~」を観ました。
新橋演舞場シリーズとしては第12弾。座長の三宅裕司さんがプログラムのごあいさつで「さすがに物語の設定がもうないなあ」と悩んでいたら、作家の吉髙寿男さんが「ボウリング業界はまだ演ってませんよ」と言って、決定したと書いている。そして「様々な機構を要し開場100周年を迎えた由緒ある演舞場でボウリングをどう見せるか」という新しい興味を引き起こしてくれたという。ボウルをレーンに転がし、ピンを倒す。これを舞台でどう表現するか。色々と知恵を絞っていることが観る人間にも伝わってきて、楽しかった。
今回のスペシャルゲストは2014年の新橋第1弾以来の出演の沢口靖子さん。第1弾のときはタイトルが「天然女房のスパイ大作戦」の名前の通り、美人女優として名高い沢口さんの「天然」をフルに生かした内容だったが、今回もそれに負けず劣らずの「国民的天然実力派女優」ぶりで、久しぶりに真打が帰ってきた!という喜びに溢れた。凛とした佇まいと確かな華をまといながら、ふとした瞬間に愛らしい「天然ボケ」で笑いを取るのは計算してもなかなかできるもんじゃない!
そして、もう一人のゲストは野呂佳代さん。僕は存じ上げなかったのだが、元AKBのメンバーだったそうで、今はドラマやバラエティーに大活躍だそう。明るくて、親しみやすいキャラクターで、笑い沢山のこの芝居でも持ち前のバイタリティーを遺憾なく発揮していた。
そして今回、一座のメンバーだったラサール石井さんが出演しない穴を埋めたのが、「助っ人」のビビる大木さんだ。なんと、お芝居に出演するのは初めてということだったが、軽妙な存在感と絶妙なユーモアで一座に以前から参加していたのではないかと錯覚させる活躍だった。三宅さんは「いまのテレビはテンポの速さやアドリブ力が求められる傾向にある中、うちの芝居はきちんと稽古してストーリーに組み込まれた設定をギャグにすることが必要」で、その点においてビビるさんは優れていると評価している。さすがだと思った。
高齢になった一座のメンバーの底力はもちろん、劇団スーパー・エキセントリック・シアターが歌とダンスとアクションで脇を固め、そして沢口靖子、野呂佳代、ビビる大木の個性によって、東京喜劇を大いに楽しむことができた。
「やっぱり!こしら!!いちのすけ!!!」に行きました。
オープニングトーク/「代脈」春風亭与いち/「新聞記事」春風亭一之輔/中入り/「厩火事」~「風呂敷」~「紙入れ」立川こしら/「かぼちゃ屋」春風亭一之輔
一之輔師匠の「かぼちゃ屋」。叔父さんが与太郎にかぼちゃを売り歩くように手配してあげるけれど、「売り声は大きな声で」と言う割には肝心の売り声を教えていなかったり、「売るときは上を見ろ」と言うだけで掛け値をすることだと教えていなかったり、そこが落語としての伏線となって笑いを呼ぶのだけれど、ただでさえ抜けている与太郎には酷だなあと思う。
「かぼちゃあ!」と怒鳴り散らして歩いている与太郎を通り掛かった人たちは遠巻きに見ているという絵が思い浮かぶし、自分の真ん前で「かぼちゃあ!」と怒鳴られたら、「喧嘩を売っているのか!」と怒る男がいても当然だろう。だけど、その男は与太郎がかぼちゃを売っていることを知ると、「とーなすやでござーい」という正しい売り声を丁寧に教えてあげるのだから、世の中捨てたもんじゃない。江戸時代の町人は優しい。
与太郎が行き止まりに突き当たって、天秤棒を必死に振り回して、「路地を広げてくれ」と叫び、家の格子を傷つけてしまったときも、その家の住人である源さんは優しく「荷を下ろして、自分が一回りしてみろ」と教えてあげる。その上、与太郎が「上を向いて空を見て」いる間に町内の連中にかぼちゃを売り捌いてあげるのだから、本当に人情に厚い人なのだなあと感心する。
「一之輔らくご」らしいのは、与太郎が売り声をやりながら歩いていると、同じく伊勢屋の若旦那が勘当されて叔父さんに命じられて唐茄子を担いで歩いてところに出くわす部分。「どちらに行くんですか?誓願寺店?あそこはよした方が良い。面倒なことに巻き込まれる」と言って、「歴史を変えてやった。美談は嫌いなんだ」とするところ。愉しい。
もう一つは、掛け値をせずに帰って来た与太郎に対し、叔父さんが「上を見たろう。それを出せ」と言うと、与太郎が「青い空、白い雲、燕の親が飛んで行った。そんな夏の昼下がり」と言うところ。叔母さんが「みつをみたい」と褒めて、可笑しい。


