三代目雷門五郎真打昇進襲名披露興行「宿屋の仇討」

新宿末廣亭の音助改メ三代目雷門五郎真打昇進襲名披露興行に行きました。
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口上。春風亭昇太会長は「五郎さんとは同郷という縁がある」。昇太師匠は清水市(現静岡市)、五郎師匠は藤枝市出身。落語の世界にはランキングとか、何が良くて何が悪いというような絶対的なものはない。お客様が自分に合った噺家をそれぞれに見つける芸能。だからこそ、お客様が頼りなんですとおっしゃっていたのが印象的だった。
五郎師匠の師匠、助六師匠は住吉踊りの大喜利がある昼席の主任を勤めているので、「夜席では高座に上がらないんです」。口上だけのために夜席まで残っている。五郎という名跡は先代の助六師匠の前名で初代。40年ほど名乗っていたそうだ。そして、「二代目を私が貰った」。三代目にはもっと大きな名前にしてほしいと叱咤激励した。
五郎師匠の「宿屋の仇討」。武蔵屋という宿屋に泊まった威勢の良い河岸の三人組の造型が見事だった。酒、肴をじゃんじゃん持ってこさせて、芸者に三味線を弾かせて裸でかっぽれを踊って大騒ぎ。当然、隣部屋の静かに寝たい万事世話九郎と名乗る侍からクレームが入り、伊八が「少々お静かに願いたい」と頼むが、「そんなに静かが好きなら宿屋を貸し切れ!矢でも鉄砲でも持って来い!」といきがる。だが、隣は二本差した侍と聞いたら、言うことを聞くしかない。態度を一変して、すごすごとお開きにしたのは素直というより、それだけ侍が怖かったのだろう。
愉しいのは、一旦反省したはずの江戸っ子三人組が話に夢中になってしまい、つい隣の侍の存在を忘れて、相撲を取ったり、色事の話で盛り上がったりしてしまうところだろう。江戸に帰ったら、相撲が始まる、贔屓は坊さんをやめて力士になった捨衣だ、廻しを掴んだら離さない…一番いくか!ドッタン、バッタン、ドッシン、メリメリ…。襖を蹴破る本気の相撲を取ってしまい、伊八に怒られるところ、なんだか可愛い。
そして、源兵衛が始めた「間男して、人を二人殺して、三百両盗んで、三年経っても未だに知られない」という、川越藩主・石坂段右衛門の奥方との色事の話。本当は深川の酒場で聞いた話の受け売りなのに、「どうせなら、こういう色事をしてもらいたいね!これが本当の色事だい!」と、うそぶく源兵衛が可笑しい。
それに乗って、あとの二人も「源兵衛は色事師!」「色事師は源ちゃん!」と手を叩いて、大声で囃し立てるものだから、隣の侍、万事世話九郎が苛つくのも仕方ない。それゆえ、侍は「俺が石坂段右衛門だ。妻と弟を殺した仇にようやく巡り会えた」という嘘を思いつくのは、正当防衛と言える。「明朝、宿はずれで出会い仇だ。朋友二人も助太刀するであろうから、ついでに首を刎ねる。あの三人を取り逃がしたら、宿の者は皆殺しだ」と伊八を脅すのも致し方あるまい。
翌朝、柱に縛りつけられて一晩中泣きっぱなしだった江戸っ子三人の疲弊した様子が目に浮かぶ。これを見て、万事世話九郎なる侍は戸惑い、伊八に説明されると、「わしに妻も弟もいない。あれは座興じゃ」とニッコリ笑う。江戸っ子三人と伊八はじめ宿の人間全員の目が点になり、さぞ脱力したであろう。実に落語らしい落語を五郎師匠が端正な噺運びで聴かせてくれ、愉しい高座だった。


