落語一之輔春秋三夜 第三夜「笠碁」

「落語一之輔春秋三夜 2026春」第三夜に行きました。「四人癖」「万金丹」「笠碁」の三席。開口一番は春風亭㐂いちさんで「家見舞」だった。
「笠碁」。六ちゃんと竹ちゃんの半世紀以上にわたる友情物語が良い。二人は同学年で、一緒に学校に通い、学校帰りでも空き地で一緒に遊んでいた。唯一無二の親友。だから、十年前の暮れの二十八日に竹ちゃんが「どうにも首が回らない。助けてくれないか」と頼みに来たときも、六ちゃんは嫌な顔ひとつせず融通してあげた。
だが、竹ちゃんは「正月二十日には必ず返す」と約束したのに、返済することが出来ず、「二月まで待ってくれないか」と頼んだ。そのときに、「俺は待てないと言ったか?」と恩着せがましく六ちゃんが目の前の碁盤の一手を待ってくれてもいいじゃないかと主張するところ。強情と強情のぶつかり合いで、埒が明かなくなる。
ここで一之輔師匠独自の演出で、二人が八歳だったときのエピソードが入るのが素晴らしい。下校途中に空き地で遊んでいたら、竹ちゃんが野良犬に悪戯をして追いかけ回され、どこかにいなくなっちゃった。でも、六ちゃんはきっと竹ちゃんは戻ってくるだろうと信じて、雨が降り出したのに、ずっとずぶ濡れになりながら竹ちゃんを待ってあげた。案の定、六ちゃんはその日から三日熱を出して寝込んでしまった。六ちゃんは「待った」のだ。
この二人が最終的に「ヘボ!」「ザル!」「どっちがヘボか、どっちがザルか、一番来るか!?」と言って碁敵として仲直りするわけだが、そのときに竹ちゃんが六ちゃんに対し、「あのときは待っていてくれてありがとう」と言って謝るところが素敵である。強情な者同士ではあるけれど、そこには男の友情が流れているという物語として、秀逸な「笠碁」である。


