白酒むふふ 桃月庵白酒「宿屋の富」、そして集まれ!信楽村 柳亭信楽「カルボナーラ届けたい」

「白酒むふふ~桃月庵白酒独演会」に行きました。「桃太郎」「松曳き」「宿屋の富」の三席。ゲストは太神楽曲芸の翁家和助さん、開口一番は桃月庵ぼんぼりさんで「身投げ屋」だった。

「宿屋の富」。一文無しの男が宿屋主人に吹く大法螺の愉しさ。奉公人が300人いて、自分の担当が50人、我先にと気を利かせる奉公人に嫌気がさす。商売という商売はなくて、祖先が拵えた財産が邪魔であちこちに貸してせいせいするのに、利息というものを付けて返してくるから厄介だ。先日は夜中に押し込みが入ったから、金蔵を案内したら、情けないかな、千両箱を80しか持って行かなかった。十三番番頭補佐が「離れが出来たから見てほしい」と言われて、ついて行ったが、三日経ってもつかないで、「あと七日かかる」と言うので、嫌になって引き返した。その道中に俳句を詠んだら本になって評判となった。「奥の細道」っていうんだけど、知っている?金というのは「ある」というくらいが丁度いい、あり過ぎるのは良くないね。これを信じてしまう宿屋主人もどうかしているんだけれどもね。

富の抽籤当日の湯島天神風景も愉しい。夢枕に神様が立って、「千両は当たらない。俺は五百両当たるんだ」と主張する男。縮緬一反買って来て、大きな財布を拵えて、その中に五百両を細かくして入れて、それを懐に吉原をひやかしに行くという。馴染みの花魁が自分の簪を金に換えて遊ばせてくれるが、「金だったら、ここにあるぜ!」と大きな財布をドン!と目の前に置いて見せて、花魁をビックリさせるという妄想。さらに、花魁を身請けして、夕刻に湯に行って帰ってくると、お銚子が一本、天婦羅に鰻、刺身が並んでいて、やったりとったり。元花魁の女房が酔って、「もう、寝ましょ」。それを毎日繰り返すという、これまた妄想が愉快極まりない。五百両当たらなかったら、どうするの?と訊かれ、「うどん食って寝ちゃう」。富札の番号の僅かの違いで、これが現実になってしまい、悄然となった男は実際にうどんを食っているという…その映像を浮かび上がらせるところに、白酒師匠の真骨頂がある。

そして、湯島天神に貼り出された当たり番号と自分の富札を見比べる一文無しの描写が秀逸だ。「当たらねえなあ」…「近いか。惜しいね。悔しい」…「あーあー、紙屑になっちゃった」…「ん?涙で文字が見えない!」…「子!」「千!」「三百!」「六十!」「五番!」…「たった!たった!」。おい、木村庄之助がいるぞ!と近くの人間がいうくらい、当人はパニック状態に陥ったのだろう。このあたりの人物描写が実に漫画チックな巧さが光る白酒師匠の高座だった。

「集まれ!信楽村~柳亭信楽勉強会」に行きました。「長屋の花見」「カルボナーラ届けたい」「引越しの夢」の三席。開口一番は笑福亭ちづ光さんで「浮世根問」だった。

「カルボナーラ届けたい」。カルボナーラだけを専門に配達するフードデリバリーの男は「ある城に住むカルボナーラ食べたい女」からの依頼を受けて、出発っするのだが…。小田原城はペスカトーレ食べている女、名古屋城はアマトリチャーナ甘噛み女、大阪城はペペロンチーノぶん回し女、姫路城はジェノベーゼを抹茶と言い張るババア、熊本城ではボンゴレのアサリの貝殻のビキニを着ているタケダクミコ、ことごとく外れてしまう。でも、タケダクミコから「カルボナーラを食べたい女は洋風の城に住んでいるはず」というヒントを得て、一路シンデレラ城へ…。

途中、イカスミパスタ白黒ポリスや投げペペロンチーノカウボーイ、ナポリタン巡査、明太子パスタ巡査長などに行く手を阻まれるも、それを乗り切る。投げペペロンチーノカウボーイには、大阪城にペペロンチーノぶん回し女がいましたよと教えてあげるという優しさも。

そして、ようやくカルボナーラ届けたい男はカルボナーラ食べたい女と出会うことができるという…ロードムービーでありながら、シンデレラ城の姫がミュージカル風に台詞を歌う演出もあって、抜群に楽しい新作落語に仕上がっている。信楽さんのセンスが光る一席だと思う。