寄席演芸家似顔絵展5

寄席演芸家似顔絵展5に行きました。

似顔絵師のちばけいすけさんと佐々木知子さんご夫妻の個展、僕は2020年の第3回、23年の第4回に続いて伺った。ふだんは東京近辺のショッピングモールなどでお客様を描いているお二人だが、ご夫婦揃って演芸好きということもあり、このような展覧会を開いている。

きっかけは佐々木知子さんが日本で唯一の演芸専門誌「東京かわら版」の「似顔絵コウザ」の連載だ。2014年4月号の漫才のホームラン先生でスタート、今年の11月号の古今亭駒治師匠で140回を数える。ここで描きためた似顔絵を演芸関係者や演芸ファンに見てもらおうという目的もあるが、同時に夫のちばけいすけさんもこの展覧会のために同じ作品数を毎回描き下ろししているのがすごい。

また、佐々木さんは「似顔絵コウザ」のためにカラーで作品を描いているが、東京かわら版は白黒印刷なので、カラーの原画を見てもらいたいという気持ちもあるのだろう。尚且つ夫婦で作風が違うので、2倍楽しめるというのも強みだ。

今回、展示された作品は、それぞれ17点。

佐々木知子

おしどり、三遊亭わん丈、立川志ら乃、玉川祐子&港家小そめ、林家しん平、桂右団治、桃月庵白浪、古今亭志ん彌、三遊亭遊雀、春風亭一花、林家きよ彦、柳亭左龍、ナオユキ、坂本頼光、三遊亭円橘、神田こなぎ、入船亭扇橋(敬称略)

ちばけいすけ

春風亭昇輔、立川談洲、三遊亭円楽(五代目、六代目、七代目)、柳家花ごめ、春風亭柳好、富士綾那&沢村博喜、三遊亭ぽん太、三遊亭遊かり、三遊亭楽麻呂、春風亭いっ休、隅田川馬石、三遊亭楽之介、橘家蔵之助、桂銀治、冷蔵庫マン、一龍斎貞橘、古今亭菊志ん(敬称略)

「似顔絵コウザ」ができるまで(古今亭志ん彌編)が写真と文章で掲示されていたが、興味深かった。①寄席に行く…ここで描きたい芸人さんを決めるのだ。編集部から誰を描いてくださいという指定は一切ないそうだ。②下書き…コピー用紙に鉛筆で描く。ざっくり描いて青色でコピー。その上からさらに鉛筆で描き加えたり、修正したりする。青色は印刷で出ないからこのやり方が都合良いそうだ。何度もこの作業を繰り返し、イメージに近づける。③ちばチェック…このあたりで旦那さんの意見を聞く。聞くけど反映しないこともあるとか(笑)④原画…下書きをスキャナーでとり、コピーして後ろから鉛筆でこすり、ボールペンでなぞり、色紙に転写する。こうするのは、色紙に直接下書きを書いたり消したりすると、色紙が汚れるからだそうだ。そして、水彩絵の具で原画を仕上げる。⑤デジタル…ここでようやくデジタル的な作業が入る。すなわち、原画をスキャナーでとって、パソコンで背景を入れたり、文字(フォント)を入れる。⑥これで完成だ。デジタルのデータはカラーだけでなく、白黒のものも作る。東京かわら版は白黒印刷だから。⑦文章…最後に、この作品(芸人)に対する思いを200字の原稿にして、近況80文字とともに編集部へ送る。

なぜ、こんなに詳しく書いたかというと、「いかに佐々木さんの作品はアナログであるか」ということを強調したかったからだ。取り上げた芸人さんへの愛情がこもった作品は丹念なアナログの作業だからこそ生まれるのだ。すごい。

この展覧会の会期中に4回、演芸会が開催された。これは前回からの試みで、今回は雷門音助さん、神田桜子さん、柳家小太郎さんが出演。僕が行った日は小太郎さんが「お見立て」を演じてくれた。木戸銭500円。似顔絵が楽しめて、落語も楽しめる良い企画だ。

また2年後になるのだろうか、寄席演芸家似顔絵展6が早くも楽しみだ。