落語協会黙認誌「そろそろ」08号

落語協会黙認誌「そろそろ」08号を読みました。
巻頭グラビアはロケット団。ツッコミ担当の倉本剛さんは「漫才をやりたい」と考えて、半ば相方を探す形で大学在学中に劇団に入り、三浦昌朗さんと出会ったそうだ。ボケ担当の三浦さんは倉本さんと組む前には三人組でコントをしていた。そのうちの一人が、今の春風亭柳雀師匠だったという…(あえて先生表記せずに、呼称を「さん」にしています)。運命というのは面白い。
1998年にロケット団結成し、2000年におぼん・こぼん先生に師事。その2年後には落語協会に入会している。いわば「寄席育ち」。こういう漫才師の例は極めて稀だそうだ。その日どんなネタを喋るかは、舞台での三浦さんの第一声で決まるとか。倉本さんはどのネタかを瞬時に判断して、漫才が進行する。これも寄席育ちならではだろう。ロケット団の魅力の秘密の一端を知った。
「そろそろ新真打対談」、遊京改メ入船亭扇白×馬久改メ六代目金原亭馬好。この中で、馬久さんと一花さんのことに触れているのが興味深かった。鶴枝師匠(当時、市童)と三人で呑んでいるときに、馬久さんが「実は一花さんと付き合っているんだ」と告白した。そして、スッキリした様子で「この話は黙っていて下さい。信じています。もし漏れたら二人ですから」と。その日からこのことが公になるまで、1年近く誰も知らなかったという…。
去年、謝楽祭で「顔見世」というお面屋さんを扇白と馬好で一緒に出店した。玉の輔師匠みたいな絵が描ければいいけど、許可取りとか大変そうなので、結局自分たちの顔やピカチュウやアンパンマンのお面を売ったそう。そのとき、一番売れたのが一花さんのお面で、即完売だった。扇白いわく「カミさん売ってる男ですからリアル“お直し”ですよ」。可笑しい。
「決定版!?披露目の弁当座談会」も興味深い。みんな一斉に始まる「大初日」と、全部終わる「大楽」、この日はとても大切。協会の興行のある寄席の昼夜の出演者(前座やお囃子さんも含む)と従業員さん全員に配る。およそ200個。一番人気は弁松の本七丸。名物の「蛸の桜煮」が入っていることが大切で、通称弁松のタコ入りと呼ばれるそう。タコが入っていないと、「なんだ、タコなしか…」とガッカリされるとか。
披露目の最中に「一番好きなのは叙々苑の焼肉弁当だ」と言った師匠がいて、それで浅草の初日にそれを出すことにした。当時で上カルビ弁当が4500円くらいしたそう…大変だあ!はな平師匠の思い出の弁当は天一の天丼弁当(松)。修行時代に根岸のおかみさんに頼まれて、ここの揚げ玉をずっとお遣いで買いに行っていた。初日に「僕もここのお弁当を出せるようになりました」と渡したら喜んでくれた、と。いい話だなあ。へぇーと思ったのは、国立演芸場。職員さんは弁当を受け取ってくれないそう。公務員に近いからか。
「羽織紐はともだち」は老舗有職組紐道明さんへの潜入取材。1652年に上野池之端で創業以来、一貫して手染め、手組みの組紐に取り組み、現在も常時600本の帯締めや羽織紐を取り揃えている。二ツ目になると紋付羽織袴が許される。昇進のお祝いに貰って嬉しいのは、「道明の羽織紐」だという。
取材に応じてくれたのは、十代目道明葵一郎社長。江戸や西洋の絵画をモチーフにした組紐を製作している。取材した玉の輔師匠が「たぶん噺家一番人気」と思う柄が「法隆寺」。この柄だけで、派手・本科・地味の三種類がある。道明さんでは毎月数種類、年間で100種類ほどの新作の帯締めを製作。噺家は定番の羽織紐のほかに、この帯締めの中から気に入ったものを「コレを羽織紐にお願いします」と注文することもあるという。
「あの頃の香盤表」は昭和60年9月上席。ファミコンのスーパーマリオブラザーズが大ヒットし、死者520名の日航機墜落事故、青函トンネルが開通した年だ。鈴本は昼席が三木助師匠の真打昇進披露、夜席が志ん輔師匠の真打昇進披露。それぞれ、中入りに師匠である小さん、志ん朝が顔付けされている。色物では、漫才のひろし・順子先生、三球・照代先生、太神楽の仙三郎・仙之助師匠、浅い上がりで一楽さん(のちの三代目正楽師匠)の名前がある。
池袋演芸場で前座にあさ市の名前が…。今の五明楼玉の輔師匠が楽屋入りしたのが、このときだったそうだ。楽屋の志ん朝師匠に「おざーます」みたいな適当な挨拶をしたら、後から来た師匠小朝がきちんと手をついて「おはようございます」と挨拶したのを見て、志ん朝師匠が「挨拶ってのはね、こうするんだ」と叱られたそうだ。
椀や寄席(毎週土曜日)が9月21日と28日にあることも記載されていて、それぞれ主任は圓窓師匠、小朝師匠と書かれている。ちゃんと公式に落語協会で顔付けされていたことが判る。ちなみに東芝寄席も同じ日に開催で、圓窓、小朝が主任。同じ銀座ということでセットで顔付けしていたのだろう。小朝師匠主任の日はあさり(現在の圓太郎師匠)がトップバッターだ。