桃月庵白酒 皐月のキモチ。「虹の男」

「桃月庵白酒 皐月のキモチ。」に行きました。新作、古典ひとつずつということで、「虹の男」と「お化け長屋」(通し)の二席。ゲストは活弁の坂本頼光先生で「血煙高田馬場」と「サザザさん 第4話シャブはどこだヨー」。開口一番は桃月庵ぼんぼりさんで「子ほめ」だった。
白酒師匠の新作落語「虹の男」、面白かった。幽霊に憑りつかれた女性が先輩に相談に来る。だが、一見「幽霊」には見えない。というのも、幽霊というものは薄っすらとした存在感なのに対し、その幽霊ははっきりくっきりと見える男性なのだ。「最初はストーカーかと思った」が、幽霊から事情を聞くと確かに一旦死んでいるのだった。
場所はお台場のレインボーブリッジの上。友達と飲んで酔っ払った勢いで橋の欄干に昇ったら、髪の長い女に「くたばれ!」と言われて突き落とされたのだという。三途の川の前の「受付」で、事情を話すと「おとなしく成仏するか」それとも「祟るために残るか」を問われ、後者を選んだ。そのときに「突き落とした女」の名前と住所が書かれた紙を渡されたが、「幽霊が初めてなもので」誤って火の玉で燃やしてしまい、手掛かりがなくなってしまったのだという。
加害者は現場に戻るという鉄則に基づいて、レインボーブリッジに行ったら、この女性が友達と二人一緒に写真を撮ろうとしていたので、写り込んで心霊写真にしてやろうと思ったが、なぜか三人の記念写真になってしまった。以来、元に戻れなくなってしまった。
突き落とされたのが一カ月前。月命日だから現地に行こうということになり、レインボーブリッジへ。「あいつじゃないか?」。でも、男だ。髪が長い。尋ねてみると、男は「生きていたんですか?…良かった」。なんでもミュージシャンで、髪を長くしているらしい。男に事情を訊く。
橋の欄干に昇っているので、「危ないですよ」と注意しようと思って近づいたら、勝手にあなたは落下してしまった。「私が死なせてしまった」と思い、お線香をあげにきたという。「くたばれ!」ではなく、「つかまれ!」。この手に掴まれと差し伸べたのだ。
幽霊になった男はそれを聞いて、「恥ずかしい。消えてなくなりたい」でサゲ。滅多に新作は作らない白酒師匠だが、前座時代から円丈師匠に誘われて作っていたことがあるそうだ。古典の構成がしっかり出来ている人は新作を作ると面白い。それを証明する高座だった。