柳家喬太郎みたか勉強会

柳家喬太郎みたか勉強会の昼の部と夜の部に行きました。

昼の部 「粗忽の釘」柳家小太郎/「残酷なまんじゅうこわい」柳家喬太郎/中入り/「あたま山」柳家㐂三郎/「ウルトラ仲蔵」柳家喬太郎

夜の部 「初天神」柳家小太郎/「極道のつる」柳家喬太郎/中入り/「時そば」柳家㐂三郎/「鬼背参り」柳家喬太郎

「残酷なまんじゅうこわい」。饅頭が怖いと嘘を言った鉄公が、嫌がらせに運ばれてきた月餅やひよこも含む饅頭各種を嬉しそうに頬張っていたが…やがて、饅頭が喉につかえて倒れて死んでしまう。その罪を被りたくない男たちが逃げようとするが…。

ある男は馬に蹴られて、またある男は蜘蛛に襲われて死ぬ。言い出しっぺの男は縄で縛られて、蜂蜜をかけられると、無数の蟻が群がり、しかもその蟻はヒアリで、蝕まれて死んでしまう。蛙が嫌いな男は尻の穴にストローを突っ込まれ、空気を吹き込まれて、徐々に膨らまされて、破裂して死ぬ。最後は蛇が嫌いな男の身体中に蛇が巻き付き、首を絞められて死ぬ。喬太郎師匠が帯(しかも緑)を解いて、襦袢姿になって演じる狂気の世界は圧巻だ。

饅頭が怖いと言っていた鉄公は実は死んでいなくて、気を失っただけ。だが、気がつくと、目の前に嫌がらせをした男たちが一人残らず死んでいる…。「ざまあみろ!」と叫んだが、饅頭の親戚?最中を見て卒倒してしまうというシュールなオチ。本当に怖いのは最中だったのか…(笑)。

「ウルトラ仲蔵」。名題に昇進はしたが、花形の太陽第三惑星の地球防衛を一向に任せてもらえないウルトラ仲蔵は「所詮、血筋がない俺は駄目なのか」と落ち込んでいたところに、ウルトラマンナイスによって次の防衛の香盤が伝えられる。R惑星、バルタン星人たった一人。ウルトラマンキングの親方は何を考えているのだろうと反発すら覚えるが…。

何か良い工夫はないものか、と妙見様に七八五十六日日参するがヒントも得られない。が、満願当日、雨が降ったので飛び込んだソーラー屋で浪人風体のケムール人を見かけ、「いい形だな」と思う。「妙な真似をすると異次元へ飛ばしちまうぞ」と脅されるが、「誰が観ているとか、観ていないとか、そんなことは関係ない。恥ずかしくない防衛をすれば良いのだ」ということに気づく。

R惑星でウルトラ仲蔵はバルタン星人に立ち向かい、スペシュウム光線を発射するが、スペルゲン反射鏡で撥ね返されてしまった。そこで、仲蔵はスペシュウム光線で輪を作り、これでバルタン星人を縦に真っ二つに裂くという新しい技(これが後に八つ裂き光輪=ウルトラスラッシュと呼ばれる)を考えつき、倒した。だが、これを見ていた村松キャップと嵐隊員は一言も発しない。

「親方に合わせる顔がない」と仲蔵は思い、テレポーテーションで地球へ行き、バルタン星人の軍団を同じく八つ裂き光輪で次々と倒す。だが、地球の日本国民もあまりの見事さに言葉を失い、ただ唸るだけだった。「修行のやり直しだ」と仲蔵は上方に向おうとしたときに、ウルトラマンナイスが「キング親方が戻って来いと言っている」と伝言に来る。

てっきり小言だと思った仲蔵に対し、ウルトラマンキングの親方は「とんでもない戦いっぷりだった。見事だった」と賞賛、レギュラーで地球防衛を任せると命じるとともに、「お前に二つ名前はいらない。仲蔵は返せ。お前は初代ウルトラマンを名乗れ」と言ったという…。ウルトラマンマニアの喬太郎師匠が高座を立ち上がって戦闘シーンを繰り広げる、熱演と爆笑の高座だった。

「極道のつる」。舞台は反社会組織の事務所。寄席好きの兄貴分が弟分のヒデでに「どうして首長鳥がつるになったのか」を教える、ただそれだけのことなのに面白い。ヒデの「馬鹿」が最高なのだ。兄貴分が「いざというときに、鉄砲玉になる素直な馬鹿がほしい」と言っていたが、まさにヒデはその素直な馬鹿なのだ。

ヒデ、お前、知識とかほしくないか。役に立つ情報とか、雑学。お前に教えてやる。つる、知っているよな?JALっすか?昔…。昔はANA?浜辺…。波がザブン!東映?沖…。海の向こうだ。アメリカっすか?その中間地点だ。一羽の雄の首長鳥が「つー」と飛んで、雌の首長鳥が「るー」と飛んで来た。兄貴、「るー」とは飛ばない。そうだな。中身のない噺だ。円丈師匠が言っていた。

教わった雑学を誰かに言いたい!と町に飛び出したヒデ。昔、JALはJALとは言わなかった。坂本龍馬みたいな、近藤勇みたいな爺が南の方の東映で、海の中間地点を見ていると、雄の首長鳥が「ぴー」と飛んで来て、枝に「ちっ」と止まった。それじゃあ、ピーチになっちゃうじゃねえか!飛行機から離れろ!ちなみに坂本龍馬とか近藤勇は幕末の老人、言いたかったのは白髪の老人!

もう一度、ちゃんと教わりたいとヒデが事務所に戻ると、兄貴分が血を流して倒れている。「他の組の鉄砲玉が飛び込んできた…仕返しの応援を頼んでおいた……間もなく電話が来る…仇を討ってくれ…。ヒデ、楽しかったよ」。それでも馬鹿なヒデは「どうして首長鳥がつるになったのか」を瀕死の兄貴分に訊く。すると、兄貴分の首から血が「ツー」と流れ、電話機から「ルー」という音がしたという…。

前座噺をここまで馬鹿馬鹿しく改作できる喬太郎師匠は天才である。