桃月庵白酒一門会 桃月庵白酒「お見立て」
桃月庵白酒一門会に行きました。
「商売根問」桃月庵ぼんぼり/「ピカレスク饅頭怖い」桃月庵黒酒/「時そば」桃月庵白酒/「長屋の算術」桃月庵白浪/中入り/「探偵うどん」桃月庵こはく/「お見立て」桃月庵白酒
黒酒さんの「ピカレスク饅頭怖い」、面白い!大師匠の五街道雲助師匠が「人情噺火焔太鼓」を演るけれど、もし「饅頭怖い」の登場人物が皆、悪党だったら…という発想が素晴らしい。口調を変えることで噺の雰囲気がガラリと変わる。そのギャップの面白さが良い。
白酒師匠の「お見立て」は杢兵衛大尽のキャラが強烈だ。これだったら、喜瀬川も嫌がるだろうと納得がいく。虫唾が走ると言うが、本当にそうなのだろう。「何で、私が行かなくちゃいけないの!?」という喜瀬川に、喜助は「仕事ですから」と答えるが、仕事でも嫌なものは嫌、職場を放棄したくなる気持ちがわからないでもない。この噺、昔は「喜瀬川は我儘だなあ」と思っていたが、案外喜瀬川の立場も理解できるようになった。
「喜瀬川は患った」では通用せずに、「死んでしまった」という作戦も入念に組み立てているのがすごい。手紙を何本も出したのに、杢兵衛大尽は来なかった、嫌われたに違いない、食べ物が喉を通らなくなって、瘦せ細り、最終的には死んでしまったという…。亡くなったのは先月の27日。鍋焼きうどんを見て、杢さんはこれが好きだった、杢さんは今頃どうしているのかしら、一目会いたかった…と言ったのが今生の別れ。喜助がお茶で目の下を濡らして、涙を流すふりをする…。
これを本気にする杢兵衛大尽が面白い。アァーホォーホォー!まるで狼の遠吠えのように泣き喚く。大迫力だ。そして、言う。「おらにも覚えがある。先月の27日、喜瀬川が夢枕に立った。あれは別れを告げに来たのか…」。アァーホォーホォー!
そして、墓参り。喜助が「他にも良い花魁が沢山いるので、お見立てください」と言っても聞く耳をもたない。杢兵衛大尽の喜瀬川を一途に思う純朴な気持ちが、かえって「面倒くさい客」と思わせているのも気づかずに。喜助が赤の他人の墓に10人前の線香と花を供え、戒名を見えなくするが、杢兵衛大尽は大真面目だ。墓に埋葬されているのは男だったり、三歳児だったり、挙句には家元談志だったり…。そして、黒柳徹子!「まだ生きているじゃないか!」。
田舎者キャラという言葉では片付けられない、今風に言えば「きも~い」キャラクターで造型された杢兵衛大尽だが、その一途で大真面目なところが可愛くて、僕は好きである。