笑福亭鶴瓶落語会「三年目」

笑福亭鶴瓶落語会に行きました。「三年目」「芝浜」の二席。10月に郡山でスタートしたツアーは、神戸、広島、大阪、鹿児島、沖縄と廻って、この東京での4公演が終わると後は仙台を残すのみだ。沖縄まではずっとトリに「子別れ」を演じていたそうだが、東京で気が変わって「芝浜」に変更した。去年のこの会でも「芝浜」を演じており、個人的には「子別れ」が聴きたかったが、残念だ。

鶴瓶噺という名のスタンディングトークが50分あって、その後に師匠が着物に着替える時間に来年3月7日から公開となる、師匠と原田知世さんが夫婦役を演じる映画「35年目のラブレター」のプロモーション的な映像がモンキーズの「デイドリーム・ビリーバー」(歌っているのはおそらく原田知世さん)がBGMで流れ、それだけで感傷的な気分になり、ウルッとしてしまった。

「芝浜」の感想は去年12月1日のブログに書いているので省略。中入り前に「三年目」をかなりのショートバージョンで演じた。

女房のお菊が患い、医者に診てもらったら「余命幾ばくも無い」と亭主にコソコソと話しているのをお菊は聞いてしまった。薬を飲んで養生すれば治ると亭主は説得するが、お菊は聞く耳を持たず、薬を飲まない。

そして、お菊は自分の気持ちを話す。結婚して2年。あなたはとても優しかった。私が死んだらきっと後添えを貰うのでしょう。その方にあなたは同じように優しくすると思うと悔しくてならない。

すると亭主は万が一お前が死んでも、生涯独身を貫くと言う。だが、この立派な身代の跡取りがいないのは良くないと親戚は口を揃えて後添えを持てというだろう。それでは私は臨終できないとお菊が訴える。

亭主は仕方なく後添えを持つかもしれないが、そのときには婚礼の晩に八ツの鐘を合図にお前が幽霊になって出てくれば、この家には悪い噂が立って、俺は生涯後添えを持たなくて済む。お菊と固い約束を結ぶと、安心したのか、お菊はあの世に旅立った。

案の定、亭主は後添えを持つことになるが、婚礼の晩、待てども、待てどもお菊は現われない。後妻には「先に寝ていてくれ」と言うが、肝心の幽霊が出ないと話にならない。初日、二日目、三日目…一カ月経ってもお菊は現われなかった。

これで亭主もすっかり諦めて後妻を可愛がり、男の子が産まれ、幸せな家族を築くが…。3年経ったある日、後妻が芝居見物に行くので、留守を頼まれた亭主は冷や飯でお茶漬けを食べていると、「うらめしや」と言う声が聞こえる。「ひやめし?」と意に介さずに亭主は何杯もお茶漬けをかっこむ様子が、すっかりお菊のことなど忘れてしまっていることを顕していて可笑しい。

「約束が違う」と言うお菊に対し、「今頃出てきて、あほか」と打っ棄る亭主。お菊はお通夜の晩に皆でよってたかって私を丸坊主にした、これで出て笑われたらいけないと思った。「丸坊主の幽霊、怖い?迫力ないでしょう」。

お菊は3年間、後妻に絶対負けたくないと髪を伸ばしたのだと訴える。お菊の悋気、負けん気が何ともいじらしく、ユーモラスに描かれた。