大人計画「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」、そして落語立川流まつり 二ツ目フェスティバル 躍動編

大人計画ウーマンリブ「主婦 米田時江の免疫力がアップするコント6本」を観ました。

宮藤官九郎さんの笑いが好きだ。だから勿論、宮藤官九郎さんのコントも大好きだ。知性を感じるのだ。社会や風俗に対する皮肉とか、反骨とか、風刺とかがたっぷり盛り込まれているのに、それを前面に押し出さずに、あたかもふざけているかのように見せているところがすごいと思う。

それに加えて哀愁もある。自分の青春時代を思い起こさせるノスタルジーを感じる。宮藤官九郎さんの“やんちゃ”な側面に激しく共感するのだ。昭和と令和をバランス良く配合した笑いというのだろうか。現代を描いている一方で、自分が若かった頃に抱いた感情も含有しているのが素敵だと思う。

パンフレットに宮藤官九郎さんが書かれた「ごあいさつ」に、初めてTV用にコントを書いてギャラを頂いたのはTBS「デカメロン」、東京スカパラダイスオーケストラの沖祐市さんと片桐はいりさんのカップルがデートする設定のものだったと書いている。もっと遡ると、駆け出しだった頃にギャラを頂かないで書いたコントに、温水洋一さんと片桐はいりさんのカップルがデートする設定のものを書いたとも書いてある。「つまり駆け出しの頃から、コントと言えば片桐はいり」だったと。このコント公演をやろうとしたときに、真っ先にはいりさんが浮かんだのは、必然だったのだと。

今回の公演で一番印象的だったのは、やはり片桐はいりさんの演技力だった。勿論、皆川猿時さんのインパクトもすごいが、それを支えるはいりさんのガッチリとした基礎に裏打ちされた演技あってこその笑いだなあと思った。

お二人以外の勝地涼さん、伊勢志摩さん、北香那さん、そして自らご出演の宮藤官九郎さん、皆さんが実に幅広い役回りの演技をこなしていて、普通の演劇以上にこのコント6本というのは演技派揃いだからこそ成り立っているのだとつくづく思った。そして大事なのは、宮藤さんが「ごあいさつ」に書いている、この文章に尽きる。

コントを書いたはずなのに、演劇並みの反復稽古をしてしまう。稽古しないとセリフも動きも体に入らない演劇人の性。中途半端な真面目さを呪う。読み合わせの時にウケたセリフの鮮度は失われる。スタッフはもう笑ってくれない。それでも演者はふざけなくちゃいけない。申し訳ないから、せめて僕だけでもと、人一倍大きな声で毎日ゲラゲラ笑った。以上、抜粋。

笑いに対する飽くなき探求心…宮藤官九郎さんの演出の素晴らしさを思う。

夜は落語立川流まつり「二ツ目フェスティバル」躍動編に行きました。

冒頭に流れた立川談春師匠の応援メッセージVTRが良かった。今の二ツ目はもっと自分の独演会、勉強会をやるべきだ、できれば毎月、少なくとも隔月でやらなくてはいけない、2時間から2時間半を一人で演じる体力をつけるべきだと。志の輔、談春、志らくはそれをやってきた。一緒に会をやろうとはしなかった、自分の力を試すために自分の会をやってきた。

「客が入らない」と言うかもしれないが、それなら半年に一回、一年に一回にしたら入るのか?当然赤字を背負うだろうが、志の輔兄さんはリポーター、私は競艇の番組、志らくさんは執筆など、脇の仕事で補填した。そこに立川流の落語家である意味がある。15分高座で落語をやっている気になるなら、寄席定席のある協会に入れば良かったのだ。それをせずに立川流を選んだということは、そういうことではないか。実に説得力にあるメッセージだった。

立川かしめ「時そば」

蕎麦を手繰らない「時そば」。一文をかすめたい男は必死に蕎麦屋を捕まえようとするが、高速で通り過ぎたり、ドナウ~と「美しく青きドナウ」を歌ったり、ジャングルからターザンの如く現れたり、倒幕を志す武士だったり…。そして男が昨夜見た光景は「16文の蕎麦をいかにも15文に誤魔化したように見せるサービス」のサブスクだったという…。一筋縄ではいかない、かしめ落語だ。

立川笑二「ちむわさわさぁ」

沖縄から出てきて渋谷で喫茶店を開業したフユキのところに、同郷のヒロユキが訪ねてきた。彼女も一緒についてきてしまって、渋谷の駅でまいたという。彼女の名前はアヤカで、嫉妬が激しく、面倒くさい女だというヒロユキに対し、フユキは「別れさせてやる」と言うが…。ヒロユキには見えるアヤカがフユキには見えない。幽霊なのか…。だが、そのヒロユキもまた幻だったという…。笑二さんらしい、ちょっと怖い噺である。

立川寸志「棒鱈」

薩摩藩のイモ侍が歌う十二カ月に対抗して、隣の江戸っ子職人が都々逸を唄うが、次にイモ侍が歌う「琉球節」に敗北宣言するのが可笑しい。サゲも変わっていて、「薩摩のイモか。胡椒じゃなくて、塩が良かった」。

立川吉笑「落語家」

落語家はロボットとなり、一体を5~6人で操縦する分業化という近未来の噺。新入りが任されたのは「立川吉笑」というロボットの手。一番の仕事はマクラから本題に入ったら羽織を脱ぐこと。だが、羽織紐の結び目が堅くて、解けない。手を先輩に任せて、首を担当するが、レバーを動かしすぎて無駄に上下を切ってしまう。所作が乱れて客席が混乱するかと思ったら、なんと客もロボットでひたすら笑っているという…。発想が吉笑さんらしい落語だ。