よってたかって秋らくご

「よってたかって秋らくご」に昼夜で行きました。

昼の部 「新・北三国志 第四章」三遊亭ぐんま/「お菊の皿」三遊亭兼好/「ナス娘の大冒険」三遊亭白鳥/中入り/「リアクションの家元」春風亭百栄/「淀五郎」春風亭一之輔

夜の部 「荒茶」三遊亭ぐんま/「英会話」三遊亭萬橘/「夢の酒」柳家喬太郎/中入り/「高砂や」柳家三三/「松曳き」桃月庵白酒

ぐんまさん。銀座ブロッサムの900人のお客さんを前に物怖じせずに、昼夜の開口一番を勤め、会場を沸かせた実力はすごい。昼の部の群馬、栃木、茨城を擬人化した新作落語は回数を重ねて練り上げてきただけあって、確実に観客の心を掴んでいた。嬉しい。

兼好師匠。お菊さんに人気が出て、エッセイ集「井戸と私」を出版したけど、ゴーストライター!というのが可笑しい。皿を数えるイベントも規模が大きくなって、前座の小菊さんが出たり、一つ目小僧の漫談があったり、色物として唐傘お化けの太神楽があったり…。面白い。

白鳥師匠。古典落語「茄子娘」の後日談を創作した高座。親がなくても育ったナスミちゃんの成長譚を同じく古典落語の「元犬」の要素を取り入れて、お菊ちゃんと四郎吉との友情へと展開していくのだが…。どうやらきょうの高座は第一話「はじめての友達」で、続きもあるらしい。奇想天外、荒唐無稽が僕の想像力を大きく超えてしまい、よく理解できなかったのが残念。

百栄師匠。定番「女子アナインタビュー」から最近のテレビ番組つながりで「リアクションの家元」へ。本当に沸騰した熱湯をかけられて熱がるところ、さらに至近距離からサブマシンガンで撃たれるところ、迫真の演技が爆笑を呼ぶ。僕的には「左手が畳の縁を踏んでいる」と「就職に有利」がツボ。

一之輔師匠が最後にビシッと決めてくれた。仲蔵が淀五郎の演技を見てあげたときの指摘が良い。名題になって嬉しくて仕方がない。どうだ!俺を見てくれ!という気持ちが滲み出ているのが良くない、淀五郎の了見をキザだと言及するところは感動的だ。判官は五万三千石の大名、その悔しさ、無念が出ていなくてはいけない。芸論として素晴らしい。

萬橘師匠。エメロン石鹸のCMで人気を得た三代目三遊亭円右師匠の新作落語。落語芸術協会で何人か演じる人がいる、いわゆる“芸協の噺”だが、それを円楽一門会の萬橘師匠がオリジナリティ溢れるギャグを加えて、自分の噺にしているところは見上げたものである。

喬太郎師匠。大黒屋の若旦那の夢に出て来た向島のご新造の色っぽい表現をデフォルメしているのが実に良い。「私みたいなお多福のお酌じゃいやでしょうけど…」「自分ばっかり、ずるい…」「私が布団に入るからって、若旦那が布団を出ることはなくってよ…」等々。そのご新造の上目遣いや下から見上げる仕草に対抗して、女房のお花が「私だって、できるもん!」と言って真似するんだけど、その不器用なところがかえって可愛いのも良い。

三三師匠。高砂、高砂、柴又線はお乗り換え。西洋ローリ(料理)と言えばハムカツ!謡を教わってやるんだけど、都々逸になったり、浪花節になったり。伊勢屋の婚礼で仲人を頼まれた八五郎の庶民的なところをしっかり出しているところに三三師匠の巧さがある。

白酒師匠。粗忽というより、健忘症といった方がいい。それが殿様と三太夫のどちらもというのだから、お屋敷のコミュニケーションは錯綜というか、混乱極まりなく、その積み重ねがこの噺の面白さだろう。植木屋の八五郎が最終的に富十郎と呼ばれるところは僕的にはツボ。これらをテンポ良く繰り出していく白酒師匠の手腕は見事である。