俺だけのラクダ 春風亭一之輔「らくだの子ほめ」
「俺だけのラクダ」に行きました。春風亭一之輔師匠が「らくだ」と「らくだの子ほめ」の二席。開口一番は春風亭いっ休さんで「子ほめ」だった。「らくだ」は本来のサゲの「冷やでもいいから、もう一杯」までの完全通し口演。迫力満点、1時間を超える熱演だった。
「らくだの子ほめ」は2019年以来、5年ぶり。屑屋の久六と丁の目の半次はすっかり意気投合して、らくだを火葬した後も笊に載せた骨を前に不眠不休で酒を飲み続け、7日が経った。「人間、死ねば儚いものだ」と半次が言って、らくだが河豚を食って死ぬ前日談へ。
乱暴者のらくだは赤ん坊が生まれたばかりの魚屋の竹さんのところに行って、酒をよこせと要求するも、爺さんが「酒などない」と言うと、パンチを食らわせ、爺さんは死んでしまった。「また人を殺めてしまった」と言うらくだの一言が怖い。
らくだは半次兄貴のところへ行くと、「頭を使え。世辞を言っておだてるんだ」と酒を奢ってもらう術を教わり、町へ出る。♬らくだ、らくだ、らくらくだ、この世はらくだのためにある~と山本リンダの狙いうちの替え歌を歌いながら、おだてる相手を見つける。米屋の番頭に会い、おだてようとするが、番頭が怯えていて、「命ばかりはお助けください。これでお酒をお飲みください」と金をあっさりらくだに渡す。「満足感がない」とらくだ。
道行く人に歳を訊くが、三十二歳に「用はない!」と殴り、五十六歳には「灰になれ!」とらくだビームを浴びせ、八十六歳にはらくだカッター!デビルマンか!
月番のところに行って、「町内の四十五歳を残らず集めろ!」。三人が集まる。「これからお前らを滅茶苦茶いい気持ちにさせてやる!」「あのクスリだけは勘弁してください」「違う!口でいい気持ちにさせてやるんだ!」。脅すような口ぶりで「おいくつですかね?四十五?大層、お若く見える。どう見ても厄そこそこ」。三人は怖いので、「これで何とかしてください」と金を渡す。らくだは「満足感がない」。
じゃあ、子どもだ。魚屋の竹さんのところを再び訪ねる。爺さんの弔いの支度でてんやわんやなのに、「赤ん坊を褒めに来た」。「大きいな。頭に三角の布切れをしてる…爺さん?そそっかしい爺さんだ」。「赤ん坊は赤いから赤ん坊?だんだん紫色になってきた…冗談だよ!可愛い、人形みたい。米噛み押すと目ん玉が飛び出る」。
「この子は本当にあなたのお子さんですか?」を何度も繰り返し、「その確証はあるんですか?」とらくだが詰め寄ると、竹さんの女房が泣きながら逃げていってしまうのが可笑しい。「フレキシブルな血のつながりですね。死んだお爺さんに似て、長命相がある」「自分で殺しておいて!」「尖閣諸島は日本の領土です。ジャワ、スマトラは中国にやってもいい。こういうお子さんに蚊帳吊りたい、首吊りたい、ホーミータイ!」。酒を出さないと爺さんにカンカンノウを踊らせると脅して酒を貰い、肴として河豚を貰って、らくだは自宅に帰る。
その河豚を捌いて、肝を「美味いな」と食って、そのままあの世に逝ってしまった…。「ということじゃないかと思うんだ」と丁の目の半次。屑屋の久六が「らくだの歳はいくつ?」「四十五」「どう見ても、初七日だ」。乱暴者のらくだの馬太郎が河豚を食って死んだ前日談、本編が大迫力だったので、余計に「さもありなん」という爆笑の高座となった。