浅草演芸ホール 真夏の風物詩 にゅうおいらんず

浅草演芸ホール八月上席八日目昼の部に行きました。今席は大喜利で噺家バンド、にゅうおいらんずによる演奏がある真夏の恒例興行、連日大入り満員の盛況だ。

「初天神」笑福亭ちづ光/「寄合酒」三遊亭美よし/漫才 おせつときょうた/「桂昌院」松林伯知/「転失気」柳亭小痴楽/漫談 ナオユキ/「お菊の皿」三遊亭遊喜/「長短」三遊亭遊之介/漫才 東京太・ゆめ子/「米丸を偲んで」桂竹丸/「鰻屋」瀧川鯉昇/中入り/「棒鱈」桂宮治/漫談 ねづっち/「子ほめ」春風亭柳橋/「ちりとてちん」春風亭昇太/音曲 桂小すみ/「ん廻し」三遊亭小遊三/大喜利 にゅうおいらんず

にゅうおいらんずの編成は、小遊三師匠がトランペット、柳橋師匠がバンジョー、昇太師匠がトロンボーン、小すみ師匠がピアノ。「このメンバーだけでは心許ない」(柳橋師匠談)ので、プロの演奏家3人に加わってもらっている。ソプラノサックスが片山士駿、ベースがベン片岡、ドラムが高橋徹。

1曲目、♬セレソ・ローサ。自称“ラテン系フランス人”の小遊三師匠が「やりたい!」と提案して、近年定番になっている楽曲だが、小遊三師匠のトランペットソロの部分が危なっかしく、それをフォローするかのように、ソロ部分の度に昇太師匠が「ウッ!」と合いの手を入れるのがご愛嬌。演奏し終わって、小遊三師匠が「殺す気か!酸欠になる」(笑)。

2曲目の♬東京ドドンパ娘は小遊三師匠のボーカルが入る。柳橋師匠が「楽しい」と言って、小遊三師匠が「それ以外の褒め言葉はないのか!」。小遊三ウォッチャーを自認する昇太師匠が言う。犬を飼っている人は「その犬が年を取れば取るほど可愛くなる」と聞く、そのことを小遊三さんを見てよく判った。「老犬」の可愛さ…なるほどね。

昇太師匠いわく「この人(小遊三師匠)は大事なことを伝えたいときに、腕をブラブラさせるの」。歌丸師匠が亡くなったときに、「次の会長は小遊三さん」と協会員誰もが望んでいた。なのに、この人は腕をブラブラさせながら、「やりたくない」と断った。それでも「一期2年でいいから会長を務めてほしい。勲章をもらってほしい」とお願いしたら、「俺はそんなもの欲しいわけないじゃん」。やっぱり、腕をブラブラさせながら言ったという。小遊三師匠はそれに対し、「協会の将来を考えたら、昇太という良い人材がいると思ったんだよ。芸も良いし、人間も良いし。これからも“飛ぶ鳥を眺める勢い”の芸術協会をよろしく」と締めたのが、とても微笑ましかった。

そして、3曲目は♬セントルイス・ブルース。ドラムの高橋徹さんのソロがカッコイイ。高橋さんは国立音大で学生に教えるほどの人だが、落語が好きで、客席からにゅうおいらんずの演奏を見ていられなくなってバンドに加入したのだそうだ(柳橋師匠談)。かれこれ18年になるというから、すごい。

この演奏の間に小遊三師匠が「ちょっと休憩」と言って袖に下がり、新メンバーの同じくトランペットの宮治師匠が登場。「去年、遊びに来ないかと昇太師匠に誘われて、いよいよメンバーになった」と柳橋師匠に紹介されると、宮治師匠は照れもあるだろうが、「強制的にトランペットを買わされたんですよ」。

昇太師匠が「何も趣味がないと言うので、楽器でも演奏したら」と薦めたそうだが、宮治師匠いわくヤマハ楽器に行って、35万円のトランペットと17万5千円のトランペットを出されて、試しに吹いてみたら、「17万5千円だけ音が鳴った」。それを聞いた小遊三師匠が「安い唇だなあ」と言ったとか(笑)。

4曲目は♬バーボン・ストリート・パレード。昇太師匠がボーカルを担当。英語で歌うが、途中日本語の替え歌で「この八月は小遊三さんのリハビリを兼ねてこのライブをやっている」旨の歌詞が入り、客席を笑わせる。

そして、♬聖者の行進で締めるのだが、演奏が終わって司会の柳橋師匠が「さようなら~」と言うと、宮治師匠がトランペットを吹き出し、演奏再開。また演奏が終わって、「さようなら~」なのに宮治師匠のトランペットで演奏再開。そんな茶番を3回ほど繰り返して場内を沸かせて大団円に。コミックバンドっぽい愉しさを大切にしている真夏吉例のにゅうおいらんず。いつまでも続けてほしい。