真山隼人ツキイチ独演会「水戸黄門 奥州の巻」「冥途の飛脚 封印切」

真山隼人ツキイチ独演会に行きました。「水戸黄門 奥州の巻」と「冥途の飛脚 封印切」の二席。曲師は沢村さくらさん。また、特別企画として浪曲音頭で綴る日本列島民謡の旅があった。

「水戸黄門 奥州の巻」。杉立村と根岸村は毎年、田畑に水を引く権利を相撲大会の勝敗で決めるという。このところ負け続けている杉立村の村人たちは素人相撲の頭取の長九郎に何とかしてくれと頼み込んだ。だが、根岸村では同じく素人相撲の頭取の音衛門が江戸相撲の鶴渡文五郎を助っ人に雇ったという噂。死活問題だ。

長九郎は神頼みで地蔵堂に来たわけだが、その様子を見ていた黄門様は事情を聞き、何とかしてやりたいと思う。そして、「わしは江戸相撲の粂川新右衛門だ。弟子が二人いるから、助っ人にしてやる」と請け合う。だが、その二人は助さんと格さん!四股名は大砲と剣鉄砲と名乗る…。

噂を聞いた音衛門は幟を20本立てて、威勢を誇る。すると、黄門様は「向うが晒なら、こっちは白縮緬だ」と対抗し、5両を長九郎に渡す。それならと、音衛門が金千両の竹馬を立てると、杉立村は二千両と張り合う。さらに、鶴渡は6万石の大名抱えだと自慢すると、こちらは水戸藩35万石だと負けていない。何なら、紀州や尾州にも加勢してもらう…(笑)。

そして、鶴渡文五郎と大砲の対戦。鶴渡の廻しを刀でスパンッ!と斬って、“もろ出し”で鶴渡の負け…。黄門様の力によって悪党の音衛門は村を追放されてしまったという。何とも強引な勧善懲悪の一席に笑った。

「冥途の飛脚 封印切」。大和新口村から亀屋に婿入りした忠兵衛は何が何でも梅川を身請けしたい。為替の金に手を出したらいけないと判っていても、これは婿入りしたときの持参金だと言い張る。それを優しく諭す丹波屋八右衛門は「今なら間に合うぞ」と助け船を出すのだが、忠兵衛は聞く耳を持たない。満座の中で恥をかきたくない忠兵衛はついに為替の封印を切ってしまう…。

今回、近松門左衛門の原作を浪曲作家の土居陽児先生が脚色したものを隼人さんが演じた。芝居では意地の悪い八右衛門として描かれているが、この脚色では忠兵衛のためを思っている親友としての八右衛門が強調された演出になっていて、「なるほど」と思わせてくれた。