三遊亭兼好 人形町噺し問屋「二番煎じ」

「人形町噺し問屋~三遊亭兼好独演会」に行きました。「干物箱」と「二番煎じ」の二席。開口一番は三遊亭けろよんさんで「半分垢」、ゲストはちんどんバンド☆ざくろさんだった。

「二番煎じ」の町内仲間のわいわいがやがやの愉しさに尽きる。一の組は月番さん、黒川先生(柝)、宗助さん(提灯)、鳶頭(金棒)、近江屋さん(鳴子)の5人。兎に角、寒い!近江屋さんが猫を懐に入れて暖を取っていたのが可笑しかった。

火の用心の掛け声。宗助さんの売り声、火事を売っているよう(笑)。近江屋さんは小唄で、火の用心、火の廻り、柝までも嘘をつく~。黒川先生は謡の調子で、ヨォー、この辺りの火の廻りにて候。鳶頭が吉原仕込みで、火の用心、さっさりあしょうお~!煙管の雨が降るようだ。

番小屋に戻ってからの、猪鍋大会。黒川先生が「その昔、猟師が猪を撃って鍋にして食べたら、2か月後に女房が産んだ女の子から牙が生えてきた」と、猪食いの報いの言い伝えをさも本当のように話すのが面白い。「でも、美味い!なぜ今まで断ってきたのか…」に、鳶頭が「猪食ったら、温(ぬく)いですよ」。

こんな愉快な酒は初めてと言う黒川先生に、月番さんが「飲んではいけないはずの番小屋で飲むから愉しいんですよ」。ごもっとも。私が高砂やを、私が木遣りを、と皆が歌いたがる。中でも“喉を大切にしている”近江屋さんの都々逸、あたしゃ、あなたの火事場の纏さ、振られながらも、熱くなるぅ~。盛り上がりは絶好調のところで、見廻りの役人が現れるが…。

この役人も粋だ。「わしも風邪をひいておる。煎じ薬を所望したい…おお、良い煎じ薬である」。これで皆も「同罪!同罪!」。猪鍋に遠慮なく箸を入れ、「口直しが良いと煎じ薬が進むのう、宗助!」。役人の受付係にされてしまった宗助さんのお人好しなところも可笑しい。

終演後、会場から最寄の水天宮前駅へ歩いている途中で、日本橋町内の火の廻り担当が「火の用心~」と柝を鳴らしながら巡回しているのを聞いて、冬の風情を実感した。