鈴本演芸場十一月上席 柳家わさび「死神」

上野鈴本演芸場十一月上席二日目夜の部に行きました。主任が柳家わさび師匠の興行だ。と同時に、きのうから二ツ目に昇進した鈴々舎美馬さんの披露目でもある。

「子ほめ」柳亭市助/「茄子娘」林家たけ平/ジャグリング ストレート松浦/「近日息子」桂やまと/「レプリカント」柳家小ゑん/粋曲 柳家小春/「エステサロン」鈴々舎美馬/「ナースコール」三遊亭白鳥/中入り/漫才 風藤松原/「幇間腹」春風亭一朝/奇術 マギー隆司/「死神」柳家わさび

わさび師匠の「死神」。金に窮して首でも括ろうかと思った男の前に「おせーてやろうか」と風にフワフワ飛んできて現れた死神。お前とは前世に因縁があるんだ、助けてやる、医者になって儲けろと死神を消す呪文を教えてくれた。

病人の足元にいるときは助かるが、枕元にいるときは寿命が尽きているのだから、決して手を出すなと男が言われたとき、「中には強情な死神がいて消えなかったら?」と訊くと、「そのときは息を吹きかけてみな」と死神は答える。それがこの噺のサゲにつながってくるのが興味深い。

近江屋卯兵衛の店で千両出すから寿命を少しでも伸ばしてくれないか、と頼まれたとき、死神は枕元にいるので「残念ながら助からない」と男は答えるが…。そのときに料理が出され、御膳を女中のお清が男の前に反対向き(箸が男の向こう側にある)に置いてしまった。慌てて直させる番頭だが、そのときに男はヒントを得るというのが面白い。病人の寝床を反対向きにすればいいのか!と。

死神との約束を破って枕元にいる死神を消してしまった男の前に、呪文を教えてくれた死神が「とんでもないことをしてくれたな!あれは俺だったんだ!減俸になってしまった。恩を仇で返すなんて!」とすごい剣幕で現れる。そして、地下の蝋燭部屋へ男を連れていく。

蝋燭は人間の寿命。今にも消えそうな蝋燭がお前の寿命だ、お前は金に目がくらんで近江屋の寿命と取り違えたのだと言われても、もう遅い。燃えさしを渡され、これにうまく火を移し替えることができれば、寿命は伸びると言われる。「震えると消えるぞ、消えると死ぬぞ」と死神が脅し、男は必死の思いで蝋燭の火を移そうとするが…。

そのとき、男はある考えが思い付いた。アジャラカモクレン~と呪文を唱え、さらに息を吹きかける。フーッ!これで死神が消えた。が、「ざまあみやがれ!これで寿命が…」と言ったところで、その息で蝋燭の火が消えてしまい、その場に男は倒れてしまい、ジ・エンド。ずる賢さが仇となる終わり方、素晴らしい。