林家きく麿 笑いと涙と歌謡ショー「スナックヒヤシンス0&1」
鈴本演芸場八月上席初日夜の部に行きました。鈴本さんは6月上席から夜の部は必ず主任のネタ出し興行をおこなっている。菊太楼師匠、馬石師匠、一之輔師匠、喬太郎師匠、今松師匠、三三師匠。そして8月もきく麿師匠、さん喬・権太楼特選集、文蔵師匠。きょう、9月上席は講談の宝井琴調先生で、これまた10日間ネタ出しが発表された。演芸ファンにとっては、とても嬉しくて有難いことだ。
今席は林家きく麿師匠が「笑いと涙と歌謡ショー」と銘打っての興行で、鈴本初主任を飾っている。①スナックヒヤシンス0&1②何が面白いの?③記憶喪失SP編④任侠流れの豚次伝~雨のベルサイユ⑤ロボット長短カスタム⑥つきいち⑦喫茶カリン⑧ポップコーン⑨三題噺⑩ねえ、あなた。以上のラインナップだ。特に9日目の三題噺は初挑戦ということで、とても楽しみだ。
「子ほめ」林家十八/「あくび指南」林家けい木/奇術 ダーク広和/「ごくごく」林家彦いち/「湯屋番」古今亭菊之丞/漫才 ロケット団/「妻の旅行」柳家はん治/「のめる」橘家文蔵/中入り/ギター漫談 ペペ桜井/「ハングル寿限無」鈴々舎馬るこ/紙切り 林家楽一/「スナックヒヤシンス0&1」林家きく麿
スナックヒヤシンスは開業して40年。ママのジュンコとチーママのアキコの年齢を合算すると150歳という、超高齢スナックだ。2人に嫌われている常連客のヤマダは、実は向かいに開店したスナックチューリップの常連だったが、店員に嫌われて、ヒヤシンスの方に流れてきたというのを、きょうのエピソード0を聴いて初めて知った。
ジュンコとアキコがヤマダの悪口をリズムに乗せて掛け合うのが、兎に角愉しい。耳の裏が超クサイ、財布がヌルッとしている、ポロシャツを着ているとピチッとして雪見だいふくみたい(笑)。でも、ヤマダはそんなことを蔭で言われていることも知らずに毎日のように通ってくるのだから、悪い人ではないと思うよ。
きく麿師匠独特のフレーズの楽しさもある。驚いたときの、ビビクリマンボ!店の女の子ヒロコがヤマダを庇うと、ヤマダですぞ!そしてカラオケを始めるときの合図、はじまるよ!はじまるよ!お歌の時間がはじまるよ!何ともファニーな空気が噺全体を包み、ほんわかした気分になる。
ヤマダが得意になってヒロコとデュエットする、♬恋のオーライ、坂道発進の歌詞も愉しい。乗り越えられない坂道を お前とならば越えられる 踏みしめられないアクセルが あなたと私の登り坂 踏み込み強いと後戻り 踏み込み弱いと急発進 二人の恋のハンクラッチ 恋の駆け引きハンクラッチ~
そのヤマダが結婚するという。その相手が何と、ヒロコ!彼女曰く、「耳の裏がおじいちゃんと同じ匂い」「財布のヌルッとするのが、愛犬のペロと同じ感触」「ポロシャツから透けている乳首が、ペロと同じ」…。二人が一斉に「ヤマダですぞ!」と叫ぶのがとても笑える。
高座が終ると、立ち上がり、ハンドマイクを持って、カラオケが流れる。小林旭の♬昔の名前で出ています、をフルコーラスで熱唱。まさに笑いと涙と歌謡ショー。最後の唄も毎日変えるらしいから、次に行く日(四日目)には何を歌うのかも楽しみだ。