立川談笑 慶安太平記 第4話「吉田の焼打ち/快僧善達」

立川談笑月例独演会に行きました。「慶安太平記」連続読みの第4話である。この部分は家元から談春師匠に伝承された口演を聴いたことがあり、講談でも馴染み深い部分だが、談笑師匠の味付けはまた違って、大変素晴らしかった。

反対俥/お化け長屋/中入り/慶安太平記 第4話 吉田の焼打ち/快僧善達

芝の増上寺から京都の知恩院まで、冥加金2000両を5日で運ぶ任務を遂行すべく、僧侶の善達は東海道を急ぐ。だが、その後ろを付けてくる男がいる。善達は相当に足が速いが、その男の足も達者で、ずっと付いてくる。護摩の灰か?善達は厄介に思いながらも先を急ぐ。

六郷の渡しの舟で一緒になり、川崎宿へ。「ご出家さま、どちらへ?」と話しかけてくるが、無視すると、「2000両を知恩院までお運びになるんでしょう?」と訊いてくる。なぜ、そんなことまで知っているのか?訝しげに思っていると、1日にどれだけ進めるか?と訊いてくるので、「30里」と答えると、「あっしは一日48里」だと言う。

保土ヶ谷、戸塚、平塚、そして小田原に出た。昼食(ちゅうじき)を共にする。男が「折り入ってお願いがある」と言ってきた。通行手形を持っていないので、善達の手形に「伴一人」と書き加えてほしいと言う。承知をして、二人で箱根の関所を通った。後は下り坂。沼津、藤沢、駿府へ出た。

萬屋という宿に泊まる。善達がその男に名を訊くと、甚兵衛だと言う。善達は用心のため、2000両の入った振り分けの荷物を抱えるようにして寝た。翌朝は六ツ立ちと決めていた。だが、男は宿の女に袖の下を渡し、「七ツに、『六ツです』と言って起こしてくれ」と頼む。そして、二人は七ツ(朝4時)に立った。

一時も早いから、川越え人足はまだ寝ている。これも男の作戦だ。男は褌一丁になって向こう岸へ渡る。荷を下ろして、また戻って、善達を肩車して川を渡る。向こう岸に着く直前、「ここから先はあっしらの世界。振り分けの荷物の中の2000両を頂きたい」と男は凄む。善達は水練の心得はない。だが、「放り出せるものなら、やってみろ!」と言うと、男は「冗談です」とあっさり引っ込んだ。

宇都谷峠に差し掛かる。男は「仕事がある」と言って、善達に近くの辻堂で待機させる。やがて、男の許に2人の手下がやって来て、「首尾は?」「馬子2人に侍2人です」。上方方面からやって来た侍を辻斬り。所持していた3000両を強奪した。事が済んだ後、善達を呼び寄せ、これは紀州の御用金だと言う。

善達と甚兵衛は三河の吉田宿まで到着。ここまで来れば、宇都谷峠の辻斬りの一件のお触れも来ていないだろうという判断だ。宿に入ると、宿の主人が「お客様は2、3日出入り止め」だという。宇都谷峠辻斬りの一件のお触れが街道筋に伝わってきたのだという。

甚兵衛は一計を案じる。荒物屋で布が巻いてある草鞋を求めたいと言って、近所の荒物屋になかったと言われると、自分が買いに行くと出掛ける。しばらくして、戻ってきた甚兵衛は「逃げる算段をしてきた」と言う。火煙筒を吉田宿の寺や庄屋や宿屋に幾つも仕掛けてきた、もうすぐ燃え始めて、宿場は一面火事になるだろうと。だから、旅支度をして布団に入って、時を待てというのだ。

甚兵衛の言う通り、やがて半鐘の音がして、あちこちで火事が起きている、逃げてくださいという宿屋の指示。吉田宿は阿鼻叫喚、上へ下への大騒ぎだ。その中を、二人は脇道に入って逃げる。

甚兵衛は甲州、武田信玄の家来の高坂弾正の次男だと名乗った。「金が欲しいんじゃない。紀州公が憎らしいのだ。徳川に恨みがあるのだ」。そして、善達に向かって、「お前さんも秀吉公の家来の流れでしょう?吉田初右衛門さんでは?」と見抜く。

「徳川だけが良ければ、それで良いのか?徳川をぶっ潰す!」。そして、高坂は初右衛門に対し、「由井張孔堂正雪を訪ねなさい。お待ちしていますよ」と言葉を残した。さあ、これが第5話にどう繋がっていくのか。楽しみである。