月刊少年ワサビ 第167号

「月刊少年ワサビ 第167号」に行きました。2月は確定申告もあって、短いし、三題噺に思うように時間がさけなかった、と柳家わさび師匠のコメントを湖面藤(こめんとう)くんが代弁していました。

ということで、「やかん」「本当に?」(三題噺)「紺屋高尾」の三席。

「本当に?」のお題は、リモート〇〇、イメージチェンジ、かぶりつき。大好きな食べ物等には何でもかぶりついちゃうことから、「かぶりつき」と仇名のある友人(A君)は口癖が「本当に?」。主人公(B君)がその口癖は良くないから止めるように忠告すると、彼の口癖はピタリと止まった。だが、逆にB君はなぜかA君に「本当に?」と言わせたくなってくる…。

そこで、Zoomを使ってA君と会話する機会があるので、そのときに「俺、イメージチェンジしたんだ」と言えば、そんなに風貌が変わっていないから、きっと「本当に?」と言うに違いないとB君は作戦を立てた。

いざ、Zoomで会って話してみると、A君の音声が口の動きとシンクロしなかったり、A君の動きが止まっているように見えたりする。これはリモートの回線に何か異常があるのではないか?と戸惑うB君。だが、それはA君の作戦で、わざとそういう動きをしていただけだという。

なぜなら、B君はいつも素直で、何でも信じてしまう癖があるから、詐欺等に引っかかりやすいので、それを直してあげようという心遣いだった…。友人の癖というのは、とかく気になるもの。青春時代は尚更だ。僕の勝手な思い込みかもしれないが、そんな素敵な友情物語?にも思えた。

トリは「紺屋高尾」。久蔵のキャラクターが、とてもわさび師匠に合っていて、好きな噺だ。しかも、笑いを沢山盛り込んで、お涙頂戴の人情噺にしていないのがいい。

御玉ヶ池の竹之内蘭石先生がいい。飲まず食わずで寝込んでしまった久蔵の脈を取るだけで、「恋煩いだな。それも、姿海老屋の高尾太夫に惚れたな」とピタリと当てる。それもそのはず、久蔵が部屋で高尾の錦絵をじっと見つめていたのを覗きみていたから。

で、「高尾は大名道具だから」なんて野暮なことは言わない。「所詮、売り物買い物。1年の給金が3両なら、3年働いて9両貯めなさい。それに1両足してあげるから、それで高尾に会わせてあげるよ」と竹之内先生が言うのだ。

3年経った日のこと、親方が「よく働いた。9両貯まったぞ。あと3年辛抱しろ。そうしたら、店を一軒持たせてやる」と言う。だが、高尾太夫に会いたい久蔵は「その9両、ください!」。理由を聞いた親方は「そういうのは大好きだ!俺が1両足してやる」と援護射撃するのもいい。

高尾太夫と枕を交わした翌朝。「今度はいつ来てくんなます?」との問いに、久蔵は正直に「あと3年、いや今度は4年かかるかもしれない」と、自分は流山のお大尽なんかじゃなくて、紺屋の職人だと正直に告白し、真っ青に染まった掌を見せる。その誠意のあるところに、高尾は惚れたんだなあということがよく伝わる。わさび師匠らしい、純朴な久蔵がとても印象に残った。