【アナザーストーリーズ】立花隆vs.田中角栄(8)

NHK―BSプレミアムの録画で「アナザーストーリーズ 立花隆vs.田中角栄」を観ました。

きのうのつづき

もう一つの記事、「淋しき越山会の女王」の方が実は角栄にとってダメージが大きかったのでは、と見る向きも少なくない。

編集部員だった斎藤禎は言う。

児玉さん一流の上手さもあるし、非常に人の情に訴える部分がある。もしかしたら、スキャンダルということで話題になるかなという印象はありました。それに比べたら立花さんは硬派だなという感じがしましたね。

ノンフィクション作家の塩田は言う。

政治の関係者、自民党の人たちにしてみると、資産形成の話はすでに知っている。田中さんからお金を受け取っている人も沢山いますから。女性の話も薄々知っているんですけど、記事があんな格好で世の中に出たら、大変だろうなという風に永田町の人は思った。

後年、その佐藤昭を取材した貴重なインタビューが残っている。1995年放送のNHKスペシャル「戦後50年その時日本は 列島改造・田中角栄の挑戦と挫折」。

お金が飛んだと。100万が良くて、200万が金権政治なのかと。私は何を差して金権政治というのか、分からないんですね。そんなに私は皆さんが巷間言われているほど金は飛んでないと思います。第一、そんなお金ありませんもの。

「淋しき越山会の女王」を書いた児玉隆也は37歳。逞しく生きる市井の人を綴るルポで注目され、念願の「文藝春秋」で初めての大仕事だった。実はこの執筆中、児玉はがんの痛みに耐えていた。翌年、惜しくも世を去る。あまりに早い死だった。

長男の児玉也一。当時、2歳だった。今、週刊誌の編集に携わっている。

父の記憶が全くないものですから、写経ですよね。分かりやすく言えば。「越山会の女王」を一度、自分が全部写してみようと。時間がある時に写して、そこから見えてくるものもあるだろうと。文章のリズムとか、呼吸感が少しでもわかるといいなと思って。

一女性がなぜここまで権力の衣装を着せられたのかという部分の、淋しい人生を描いているので、単にスキャンダルを暴くために書いたものではないんだと感じました。

立花さんも、両方とも、ものすごい熱量と迫力がすごいなっていうのを感じて、両方を当時併せて読んだ時のインパクトはすごかったんだろうなと、今回改めて読んで感じました。

最も若く人気の最高権力者に放った2発の文春砲。撃ったのは、ともに30代の若きライターだった。

田中角栄の退陣後、田中ファミリーの役員たちは宅建法違反や特別背任の罪に問われた。しかし、田中角栄本人には手が及ばなかった。

つづく