三遊亭兼好「妾馬」お涙頂戴には決してしない、明るくて軽妙洒脱な高座が何よりの魅力。

日本橋社会教育会館で「三遊亭兼好 人形町噺し問屋」、国立演芸場で「けんこう一番!」を観ました。(2022・06・16&22)

「噺し問屋」では、「あくび指南」と「文違い」を聴いた。実に軽妙洒脱。かつ兼好カラーにしっかりと染められている。

「あくび指南」では、「暮らしのあくびより、湯屋のあくび」とあくびの師匠がタイトルコール(?)してから見本を見せるのが妙に可笑しい。「四季のあくびより、夏のあくび」、「舟もいいが一日乗っていると、退屈で退屈で…」というところ、他のどの師匠でも見たことのない、独特のあくびで、これがまあ、「本当に退屈なんだろうなあ」と納得させるあくびの表現になっているのが凄い。

「文違い」は、男女の騙し騙されあいの噺だから、下手をすると嫌な気持ちになってしまうのだが、そんなことは一切ない明るい高座なのがいい。はじめに杢兵衛大尽を出して、次に半ちゃんを出すという構成が功を奏しているのかもしれない。騙しているお杉も、実は芳次郎に騙されていたというのも、マンガチックな表現によって嫌な気持ちにならない。これが兼好ワールドというものだろう。

「けんこう一番!」は、「子ほめ」「花筏」「妾馬」。「妾馬」を兼好師匠で聴いたのは多分、初めてだと思う。

これも実に明るい。八五郎が大家に呼ばれて赤井御門守を訪ねるところから、なんだか遠足気分。いちいち口を出す三太夫と八五郎の掛け合い漫才風のやりとりも可笑しい。妹のつるを見つけてからも、カラッとしていて八五郎が良い兄貴に見えてくる。母親が「孫を抱けない」と嘆いていると言ったら、あっさり殿様が叶えてあげると言って、お涙頂戴にしないところも、兼好師匠らしくてとても良いと思った。