「ノルウェイの森」~“世界のハルキ”はこうして生まれた~(9)

BSプレミアムの録画で「アナザーストーリーズ 『ノルウェイの森』~“世界のハルキ”はこうして生まれた~」を観ました。

きのうのつづき

80年代、大ベストセラーとなった「ノルウェイの森」。それは文学の枠を超えて、社会現象にまでなった。小説は一時の流行に終わらず、今なお、世界で読み継がれている。国を超え、時を超え、私たちの心を揺さぶる何かが、この物語の中にあるのかもしれない。

2021年、早稲田大学に国際文学研究館、通称「村上春樹ライブラリー」がオープンした。村上が寄贈、委託した執筆関係の資料や蔵書、数万枚のレコードが収蔵され、一部が公開されている。村上ファンや研究者はもちろんだが、ふらりと立ち寄る学生も少なくないという。

「ノルウェイの森」出版からすでに30年以上が経つが、村上はその後も数々の話題作を発表しながら、社会や個、体制と個人の関わりを見つめてきた。

2009年2月、エルサレム賞受賞。このとき、こんなスピーチをした。

高くて頑丈な壁と、壁にぶつかれば壊れてしまう卵があるなら、私はいつでも卵の側に立とう。私たちはそれぞれが多かれ少なかれ、卵なのです。世界でたった一つしかない掛け替えのない魂が、壊れやすい殻に入っている―それが私たちなのです。(2009年3月2日 毎日新聞)