【SWAクリエイティブツアー】“新しいスタンダード”を創る。新作落語家としての志の高さに乾杯!

新宿シアタートップスで「SWAクリエイティブツアー」を観ました。(2022・04・13)

SWAが本格的に活動を再開!となった矢先に、コロナ禍となり、2020年4月の横浜にぎわい座、7月の本多劇場は休止。ようやくクリエイティブツアーがはじまったのは、去年3月のシアタートラムだった。その後、11月にシアタートップスであったが、チケット取得は激戦で行くことが出来なかった。シアタートップスでの公演は今回が初めての参戦である。

今回のテーマは「秘密」。昇太師匠がこのSWAで新作を創る意味について語っていたが、一言で言うと「新しいスタンダードを創ろう」ということだと。メンバー4人がそれぞれ自分の演じる新作を創って、演じるのだけど、その際に自分以外の3人とも意見交換をして、最終的には作者だけでなく、他のメンバーも演じられるようになるのが目的だ。実際、それが過去に実現している作品も多くある。

だが、昇太師匠が言って、確かに「そうだな」と同意したのは、白鳥師匠の作品だけは白鳥師匠にしかできない。そこが「目的」と外れている。でも、仕方ないことでもある。4人にはそれぞれの個性があって、均質ではないし、だからこそ、この4人のユニットの存在意義があるのだから。白鳥師匠には、白鳥師匠の強烈な個性があり、それが1/4あって、SWAの魅力なのですよね。

柳家喬太郎「当世女甚五郎」

相変わらず巧い構成。そして、ちょっとロマンチックな味わい。木工アーティストの女性を「令和の名匠」という連載記事にするために取材に訪ねたライターの男性。二人は「え!」とビックリする。それは、中学時代の同級生だったのだ。中学卒業のとき、彼女は彼に木工のサイコロをプレゼントした。そこにはあるメッセージが籠められていた…。令和の名匠はさらなるステップとして、フランスに渡る。取材した記事が載った雑誌が出来上がったので、空港に駆けつけるライターの男。そこで、そのメッセージの秘密が明かされる…。ロマンチック!

三遊亭白鳥「日本海の英雄」

田中商店を一代で築き上げた田中虎造、72歳。銀座のナンバーワンホステスを妻にした。だが、二人の間には子供が出来なかった。一方、虎造は秘書との間に隠し子をもうけていた。自分が死んだとき、莫大な遺産を巡って、骨肉の争いにならないか、心配だ。そこで虎造は死んだふり作戦をして、両者の本音を引き出そうとするが…。下ネタや楽屋ネタが多いのは師匠の特徴だけれど、それが浮き立ってしまって、ストーリーの面白さが感じられなかったのが残念だ。

林家彦いち「ごくごく」

小学校に建っている、一風変わった銅像。これは、一体誰なのか?疑問に思った小学生に、担任の先生が教えてあげる「呑次郎伝説」。なんでも美味しそうに飲む呑次郎は、赤ん坊の頃は哺乳瓶から吸うミルクの飲みっぷりがすごかった。小学生時代には、学校に「給食牛乳廃止論」が浮かび上がったが、呑次郎の飲みっぷりに全教師が感嘆し、吹っ飛んだ。その後、大人になっても、ビールや青汁など色々な企業からオファーがあり、ポスターになったり、CMになったりした。そして、最大の功績は、「苦い薬」を飲むのを嫌がる子供を説得するために、その「苦い薬」を美味そうに飲むことで、日本の医療現場を助けたこと。でも、その「吞次郎伝説」は実は…。兎に角、師匠の飲みっぷりに仕草が妙にはまって、気持ち良い。

春風亭昇太「ロマンス恋泥棒」

人気漫画家の月星夢見、72歳。編集者が人気連載漫画の主人公のキャラクターの変化を見逃さず、月星先生の身辺に何か変化があったのでは?と勘繰る。すると、月星先生は恥ずかしがりながら、最近、SNSで知り合ったロベルトという52歳のニューヨーク在住の男性ファンの存在を明かす。でも、よく聞いているうちに、月星先生がロベルトに多額のお金を貢いでいることが発覚。騙されている!やめた方がいいです!と編集者は助言するが…。実は、月星先生も某女優の老けメイクの写真を自分だと偽っていて…。最後のどんでん返しも愉快な一席に。