【猫じゃ猫じゃの会】猫にまつわる噺、そして色物さんがたっぷりの高座に酔う

江戸東京博物館小ホールで「猫じゃ猫じゃの会」を開催しました。(2022・03・27)

猫じゃの会は去年9月に続いて、第2回である。この会の趣旨は猫にまつわる噺を演じてもらうというのが最初にあった。第1回は柳家さん喬「猫定」、昔昔亭昇「猫の皿」。そして、今回は柳家権太楼師匠に「猫の災難」をお願いし、若手二ツ目枠では三遊亭花金さんに「猫久」を演じてもらった。

だが、もう一つ、裏のテーマとして、色物さんにたっぷりと時間を持ってもらい、その芸を堪能してもらうという目的があった。猫・・・と言えば、江戸家小猫先生だ。小猫先生にレギュラーでご出演いただこう。そして、寄席では10分程度の持ち時間のところ、25分担当していただこう。そして、見事なまでに2回とも小猫先生は全く観客を飽きさせないレパートリーの広さで魅了した。

第1回では立花家橘之助師匠に、何と「たぬき」フルバージョンをお願いして、普段の寄席では味わえない醍醐味があった。そして、今回も柳家小菊師匠が端唄、小唄、長唄、都々逸…まさに「粋曲」をたっぷりと聴かせてくれた。本当に感謝してもしきれない。

「狸札」入船亭辰ぢろ

「猫久」三遊亭花金

花金さんは、噺家の佇まいを生まれながらにして持っている人だ。とても二ツ目に昇進して2年とは思えない落ち着き。そして、口跡の良さ。味わい。この噺は難しい噺だ。ストーリーはあるようで、ない。八五郎が武士から聞きかじった理屈を女房に披露してみせるが、あやふやで滅茶苦茶で、そこが可笑しいのが肝だ。言葉遊びの世界だが、きちんと肚に入れて演らないと、どこが可笑しいのかわからなく本当の頓珍漢になってしまう。花金さんは、その八五郎の頓珍漢を実に流暢に笑わせてくれる。逸材だと思う。

ものまね/江戸家小猫

全国の動物園を回り、飼育員さんと友達になり、勉強していることを、さりげなくユーモアにして聴かせてくれる。勉強熱心だけれど、それをそのまま出したらアカデミックになって野暮だということを心得ているのがすごい。ヤギと羊の違い、カバをお客様に納得してもらう芸にする工夫、リスザルの鳴き声の信憑性…。話芸としても成立している。チンパンジー、シロテナガザルときて、フクリテナガザルは最高だ。両足のふくらはぎを攣ったおじさんって!(笑)

粋曲/柳家小菊

艶っぽい芸である。それを前面に押し出さず、そこはかとなく醸し出すのが良い。寄席の高座だと、その艶が出る直前で寸止めされてしまうので、こういう機会がないと本当の小菊師匠の魅力が伝わらない。都々逸で良かった文句。花は口実、お酒は道具、酔ってしまえば出来心。片手ずつ手と手を合わせて、あぁもったいないと二人で拝んだ窓の月。役者尽くしのさのさ、かんちろりん、深川くずし、淡海節…最後は両国風景で〆て、珠玉の時間であった。

「猫の災難」柳家権太楼

マクラで「コロナ入院体験記」20分。これが最高に可笑しかった。終演後に、「これは寄席の一席になりますね」と。で、本編。酒が飲みたい主人公の「本当に酒が好きなんだなあ」という人物造型の素晴らしさ。そして、権太楼師匠ならではの、失態と慌てぶりの描写が爆笑を誘う。この面白さは言葉を超える。袖で聴いていて、なぜか幸せな気分になった。