【プロフェッショナル 数学教師・井本陽久】答えは、子どもの中に(2)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 数学教師・井本陽久」を観ました。(2020年1月7日放送)

きのうのつづき

井本は授業の中で正解不正解を示さない。

駄目とか、そういうのは全然ないんでね。今さ、何個あるか分からないけど、まだちょっとさ、黒板でこんな感じのって、書いてみて。

生徒の答えを尊重する。

正解か不正解か、そこで評価するのはあまり意味がないという風に思いますね。学校でつける評価っていうのは、求めた答えを出せるかどうかってことなので、それを正確に再現する力はつくかもしれないけど、別の壁がポンと立ちはだかったときに、自分がどうにかするってことができないですよね。なぜかって、試行錯誤を知らなければ。

高さとか変えていいんですか?

もう自由に、自由に。

ついには生徒が自ら問題を作り始めた。一般的なカリキュラムからは逸脱した授業。だが、井本の教え子たちは考える力の土台を身に付けて、世界で活躍する人材に育っている。

当たり前のように全部線の上で考えちゃいそうじゃん。でも、他にもいろんな場合があるから。実は結構、円の個数と位置関係って深いよね。

たった1問で一時間、答えも出ないまま、授業は終わった。

(この授業で生徒は何を学ぶんですか?)

どんな題材でもいいから、そこでどういう思考がおこなわれかってことですよね。

(先生が書いたのって、丸2つと棒線1本ですよね)

僕が教える人になっていたら、たぶん自分で自由に考えないと思います。なぜかと言ったら、先生のところに答えがあるわけだから。答えがあるのに、自分が何かを言ったら、違ったら嫌じゃないですか。だから僕は答えを出す人じゃないんですね。

(教える人じゃなければ、何をする人なんでしょうか?)

深い質問ですね・・・僕は何なんだろう?・・・分からないですね。まあ、でも、不思議なんですね、授業として。でも、楽しいでしょ?生徒は目いっぱい考えているでしょ。それでいいんです。

井本の授業はアドリブのように見えるが、実は緻密な準備の賜物だ。特に生徒の答案のチェックには驚くほど時間をかけている。休日にもかかわらず、この日も学校にいた。

時間がかかるのには、訳がある。井本が年間300枚以上作るオリジナルのプリント。そのほとんどが生徒の間違いを材料にしている。1時間の授業のために、ときに10時間以上かけて、答案をひとつずつ読み込み、良い間違いを探す。

宝ですね。誤答は宝です。ナイス誤答っていうのは、みんながこれなんで誤答なのか、パッと見たら分からないっていうような誤答があるんです。それをポッとみんなに出したら、「え?なんで違うの」「ああそうか」みたいな。「え?」ってなりますよね。

井本が配っているプリントには一見正解に見えるナイス誤答が仕掛けられている。

よく考えたら、これは駄目です。穴があります。

狙い通り、生徒たちの考えるスイッチがオンになった。

すごいんだけど、後から考えると、これは駄目だってなる。

でも実は井本が最も大事にしているのは、授業とは関係なく、生徒にちょっかいを出すこと。そして、生徒が出来ている些細なことを探しては、言葉にして認める。

用があって何かするって、ちょっと遠いじゃないですか。でも用もないのに訳も分からないことをするっていうのが、純粋にその子に興味を持っているってことなんですね。たぶん興味を持っているよっていうのを、好き好きっていうのをペタペタペタって貼りたいというのが僕の根底にあるんだと思います。

年頃の子じゃないですか。キモッとか言いながら、イモニイじゃなくてキモニイとか呼ばれたりするけど、そう言われながら、僕の中ではそんなに嬉しいんだって、僕はそう確信しているので、勝手に。僕も幸せですよね。おめでたいうやつですよね。

つづく