【プロフェッショナル ウエディングプランナー・佐伯恵里】愛を信じて、生きていく(1)
NHK総合テレビの録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 ウエディングプランナー・佐伯恵里」を観ました。
佐伯さんが手掛けた結婚式では涙と笑顔が溢れる。式場の片隅で彼女はきょうも泣いていた。結婚と一生、生きていくと決めた。ウエディングプランナー、佐伯恵里(41)さん。手掛けた結婚式は2000件以上。活動拠点は群馬にありながら、全国から依頼がくる。「心の底まで届けるのはどうしたらいいのだろう」「人生はドラマチックなんですよ。誰の人生もね」。そう語る、佐伯さんのドキュメントを観た。(以下、敬称略)
佐伯は3年前、2児の子育てをきっかけに、勤めていた式場を退職し、独立した。自宅が事務所。ホームページやSNSを通じて、全国から依頼が届く。
佐伯が言う。
結婚式を作るって、人生を作っているのと一緒なので、すごい本気で考えちゃうし、ベストを尽くしたいですね。後がない高校球児みたい。
この日、群馬県内の式場を訪れた。結婚式を依頼されたカップルとの打ち合わせだ。佐伯は特定の式場やホテルに所属しないフリーのプランナー。式場や料理、衣裳など、その都度組み合わせを考え、オーダーメイドで作り上げる。
依頼主がやって来た。新婦の姉も4年前、佐伯の元で結婚式を挙げた。その感動が忘れられず、今回依頼したという。式場を案内しながら、それぞれの反応に気を配る。二人の間の温度差はないか。
佐伯が打ち合わせの準備をはじめた。コンセプトミーティングと名付けた対話に数時間かけるという。「一生共に歩むパートナーと決めた理由は?」。人前では答えにくい問いをストレートに投げかける。新婦が答えた。
「俺は定職に就くから、お前は好きなことだけして、稼いでいいよ」って言ってくれたこと。「絶対全部成功するから大丈夫だよ」と言ってくれた。
普段、表には出すことのない互いへの思いを言葉にしてもらう。「お互いに尊敬できるところは?」。
少しあって、新郎が話しはじめた。
才能があって、その才能を分かっていたんですけど、小学校の先生をやるということで、才能が潰れていたんですよ。
新郎が口にしたのは、教師を辞め、新たな挑戦へと踏み出したことを支えたいという思い。
佐伯が語る。
とにかく聞く。ひたすら聞く。勇気を出して、ひかれちゃうかもしれないじゃないですか、深い話をするっていうのは。これの目的って、私が二人のことを知りたいんでって言ったけど、本当の目的は二人が自分たちを見つめてほしくて。
具体的なことに話が及ぶ。
フランクがいい。カチカチなのは好きじゃない。ケーキカットは絶対に嫌だ。
すごくお客さんが喜んでくれたりとか、すごく感動的であったりとかしたら、やってもいいのか?
見飽きました。
佐伯は否定も肯定もしない。
私の色には染めたくないんです。私の趣味嗜好、好き嫌いを一切入れないということですね。そういう感覚をちょっとでも入れていくと、毎回似た感じになっちゃう。じゃなくて、二人の中から自然と滲み出てきたものが最終的にデザインに落ちてきてほしい。
3時間の打ち合わせが終わった。彼らの感想は。
僕らが知らないような、もともとあまり知らなかったようなことも、こうやって振り返れて。直接は言えないこともある中で聞いてもらって知ったこととかもあるし。きょうは仲良く帰れそうです。
翌日。佐伯はコンセプトシートと名付けた手作りの企画書をすでに作り上げていた。
ケーキカットはしたくないというので、ハモンセラーノ。生ハムの原木をカットしたいとおっしゃっていたので。パンをビュッフェにしようと。新郎のお母さんがパンを焼くのが上手なんです。彼は東京の方で、彼女は群馬の方なので、お友達は日本全国から集まってくるんですけど、そういう家族のお母さんのこととかも、ちょっと知ってもらいたい。いろんな人が持っている思いを何回交差させられるか。
自ら情報を集め、1つの式の中に思いが交わる可能性を埋め込んでいく。佐伯は結婚式をこう表現する。未来への、お守り。
お守りになってほしいなって。いざというとき、なんか人生にいっぱいある。何もかも、もうしんどいなみたいな時とか、人生どんなことがあっても、この思い出があるから、ふと心が温められるみたいなものに結婚式がなっていたらいいなと思って。未来を作っているから、めちゃくちゃ楽しいです。
つづく