弁財亭和泉「落語の仮面第9話 二人の豊志賀」三遊亭花と立川あゆみのつばぜり合いに真骨頂を見た

らくごカフェで「弁財亭和泉の新・新作びゅーびゅー」を観ました。(2021・12・04)

この日の演目は「箱の中」「すぶや」「落語の仮面⑨二人の豊志賀」の三席だ。

和泉師匠は三遊亭白鳥師匠の作品である「落語の仮面」全10話をすでに習得していて、いつか連続でこの10話をやりたいと考えているそうだ。「さすがに、10日間連続は厳しいので、10週連続とか」とおっしゃっていたが。期待が膨らむ。

この「落語の仮面」シリーズは、新作落語の才能に恵まれた三遊亭花という女流落語家の成長譚だから、原作者である白鳥師匠の高座もオリジナルならではの面白さがあるが、和泉師匠が演じると、女流である強みが生きて、また原作とは違った魅力がある。

また、奇想天外で天衣無縫な白鳥ワールドを一旦整理して高座に掛けているから、聴き手の頭の中にもわかりやすく入ってくるという強みもある。これは、柳家三三師匠が「任侠流れの豚次伝」全10話を、三三師匠の流儀で嚙み砕いて高座に掛けたのと似ている。

で、この日に聴いた第9話は、三遊亭花と立川あゆみの三題噺対決である。レフリーとして月影先生が入って、交互にリレーしていくのだけれど、新作派の花と古典派のあゆみの駆け引きが実に愉しい。

お題は「トランプ」「大黒様」「さくら水産」で、これらを使って、花は新作の世界に引き込もうとし、あゆみは古典の世界観を大事にしたストーリーを構築していく・・・。

そのつばぜり合いの楽しさに加え、これは白鳥作品ならではと思うのだが、地底人が登場してタコのような動きをしながら喋るくだりは爆笑の渦となる。これを新作派の花だけでなく、古典派のあゆみも演じるところに、この噺の妙味がある。

兎に角、終始笑いっぱなしの第9話であった。

過去の高座を録音したICレコーダーを紛失してしまったという和泉師匠は、この「落語の仮面」和泉バージョンも音源を失ってしまった。高座を練り直すために、もう一度録音をしなければいけないので、機を見て第10話も掛けることになるだろうと言っていた。

近い将来、「落語の仮面」全10話連続公演が実現する日を楽しみにしたい。