【パ・ラパパンパン】作・藤本有紀×演出・松尾スズキ×主演・松たか子、コメディタッチなミステリーときどきミュージカル!
シアターコクーンで「パ・ラパパンパン」を観ました。(2021・11・17)
作・藤本有紀、演出・松尾スズキ、主演・松たか子、である。
僕は2016年にNHKで放送された木曜時代劇「ちかえもん」が好きだった。本当に面白かった。だから、DVD―BOXまで買ってしまった。あまり連続ドラマは観ない僕だが、このドラマにははまってしまった。その脚本が藤本有紀さんで、主演が松尾スズキさんだった。プログラムにも松尾スズキさんが書いているように、これがご縁で今回の芝居が上演されることになったという。
「ちかえもん」でそうだったように、藤本さんが書く脚本はミステリー仕立てなのがいい。だから、今回もミステリーになっている。これは松尾さんがリクエストしたのかもしれないが、実に上質のミステリーになっている。休憩20分を挟むが、その前半と後半を巧みに利用し、後半を謎解きがどんどん進むミステリーにしている。これがいい。
そして、演出が松尾さんだということが、この芝居をさらに面白くしている。コメディの要素がふんだんに盛り込まれている。これは大人計画とコクーンの共催だから、そのバランスが良くて、大人計画的な笑いが程よく施されているのが良い。
そしてそして、松たか子さんが松尾スズキ演出の芝居に初出演なのだ。共演はあるそうだが、演出されるのは初めてだそうだ。で、松尾さんは折角、松さんが主演してくれるならと、ミュージカルの要素も取り入れた。これがまたいい。彼女の歌を3回くらい聴くことができたのも、この芝居の付加価値になっている。
「クリスマス・キャロル」を下敷きにしているのもいい。この芝居は、「クリスマス・キャロル殺人事件」の謎解きミステリーといってもいい。
19世紀のロンドン。お祝いムードに包まれたクリスマス・イブ。皆がクリスマスの準備に浮かれているのに、街中の嫌われ者スクルージは、いつもと変わらず不機嫌で街を歩いている。
教会ではウィルキンス慈悲慈愛ファウンデーション主催のチャリティーパーティーが催され、生まれつき不自由なティムを中心に、人々が集い、笑顔を交わしている。そこに、珍しく、スクルージがやってくる。
やがて街は静かに眠りにつき、それぞれに幸せな夢を見る。ところが、翌朝、スクルージが自宅で倒れているのが発見される。パーティーに参加した11名は容疑者として、刑事と探偵が事件を暴いていく。
という簡単な芝居じゃない!その「クリスマス・キャロル殺人事件」を一旦は書きあげた小説家、来栖てまりが自分が早期解決してしまった小説の事件の真相に気づき始めたところから、物語は俄然面白くなるのだ。
小説世界の真犯人は誰なのか。現実世界で何が起きたのか。ふたつの世界を行き来しながら展開する藤本有紀の脚本、松尾スズキの演出に拍手喝采であった。