白鵬は誰が何と言おうと、大横綱だった(2)

NHK総合テレビの録画で「NHKスペシャル 横綱白鵬“孤独”の14年」を観ました。

きのうのつづき

白鵬は2000年、15歳で来日した。体重62キロ。同期の中では小柄だった。

白鵬が振り返る。

上の関取衆や先輩方が「力士には向いてないんじゃないか」「床山にした方がいいんじゃないか」と言っていた。

が、誰よりも稽古に励み、スピード出世を果たしていく。2006年、21歳で大関昇進。そのときに立ちはだかったのが、圧倒的な強さを誇っていた朝青龍だ。

白鵬が語る。

目標、照準は朝青龍だったと思います。スピードがあって、気迫があって、怖い存在でした。

朝青龍も、白鵬のことを幕下の頃から目をかけ、いつか自分を脅かす存在になると思っていたという。

一番強いときの朝青龍だったから、あの頃は。朝青龍しかいない大相撲界だった。もう、ライバルだったよ。勝たないといけない感じになってくる、土俵に上がれば。

2007年夏場所。千秋楽。白鵬の綱取りがかかった一番で、朝青龍は対戦した。プライドがぶつかり合った。そして、白鵬は見事な全勝優勝。目標の先輩と肩を並べた。

目指した横綱像は正反対だった。白鵬は言う。

朝青龍関の逆のことをやっていこう。ある意味、それは見本というか。

それに対し、朝青龍が言う。

一番参考になったのは私だと思います。白鵬の成長は僕の姿を見て、クリアしていったんじゃないかと思う。

朝青龍は荒々しい取り口や型破りな言動で批判も多い横綱。白鵬は正統派の横綱を目指した。そして、48代横綱・大鵬の元を訪ねる。

5時間くらい話して、痺れたというか、怖さが増したというか。「わしは横綱になったときに、(負けたら)引退することを考えていました」と。この「引退」の二文字を背負わないといけないという思いにもなったし、綱の重みも知りました。

そして、もう一人、目標にしたのは、35代横綱・双葉山。相撲の神様と呼ばれ、不滅の69連勝を樹立した力士だ。相手をしっかりと受け止め、勝ち切る横綱相撲。落ち着き払った立ち居振る舞い。そのすべてに心を奪われた。

白鵬が語る。

今から相撲を取るという顔をしない。何で人間がこういう顔になれるんだと。「心技体」という言葉を使うに相応しい力士は双葉山関だと思うし、本当にどこに行っても愛される、そういう横綱を目指したい。土俵において強くて、土俵を降りたら優しいお相撲さんになりたい。

白鵬は目標を掲げて、美しく力強い相撲で優勝を重ねていった。

つづく