【プロフェッショナル 動物写真家・岩合光昭】猫を知れば、世界が変わる(3)

NHK総合の録画で「プロフェッショナル 仕事の流儀 動物写真家・岩合光昭」を観ました。(2017年5月29日放送)

きのうのつづき

岩合光昭の名前を一躍世界に広めた一枚の写真がある。正面ではなく、横を向いたライオンの親子。

岩合が振り返る。

ライオンと言えば、正面向いてね、たてがみがあってみたいな顔が普通だった。「横顔が良いね」って編集者と話していたら、「おお、すばらしいね」ということで。

世界的に権威のある専門誌「ナショナル・ジオグラフィック」の表紙を飾ることになった。この写真がなぜ撮れたのか。きっかけは岩合が「つらかった」と振り返るアフリカでの体験にある。

岩合は昭和25年生まれ。子どもの頃からカメラがおもちゃ代わりだった。父親の徳光さんは日本で初めてとも言われる動物専門のプロカメラマン。中学生のときから父親の助手として様々な動物を目の当たりにしてきた。意外にもそれが苦痛だったという。

すごく地味な職業だなと思ってました。コウモリの洞窟に入るとコウモリのうんちが堆積したところを歩かなきゃいけない。鼻をつまみながら入らなきゃいけないので、いわゆる3Kです。汚い。

だが、最後と思って父に付き合った絶海の島、ガラパゴス諸島で考えが変わる。当時は二十歳だった岩合。初めての海外。その自然は圧倒的だった。

岩合が語る。

野生動物、自然の世界を見ていると当たり前のことが当たり前に行われている世界なんですよ。ウミイグアナでも潮の干満差によって岩にしがみついて海藻を食べる時間と岩に登って日向ぼっこして体を温かくする時間とか。エメラルドグリーンの中をアシカがシューッとサーフィンするんです、体を。それがカッコイイんですよね。やっぱり、その動物たちが住んでいる森だとか山だとか海だとか、「これ、中学のときに見てるな」と思ったんですよ。そのときに自分の体に蓄積しているものが湧き出してきたんですよね。

大学卒業後、進んだのは父と同じ動物写真家だった。岩合はすぐに頭角を現した。世界30か国をめぐって撮影した写真は、写真界の芥川賞とも言われる木村伊兵衛写真賞を受賞。

しかし、岩合は満足しなかった。もっとダイナミックな誰も見たことのない写真を撮りたい。

いろんなところに行っても、せいぜい滞在期間は2週間が最長で、どこか定点で季節変化を見ながら、動物たちがどうやって暮らしているのかっていうのが見てみたかった。

つづく