柳家喬太郎「牡丹燈籠⑥ 孝助の婚礼」

柳家喬太郎「牡丹燈籠~孝助の婚礼」
お国と源次郎の悪だくみを知った孝助は、源次郎と間違えて、主人である飯島平左衛門を錆びた槍で突いてしまう。飯島は孝助に相川新五兵衛に託した手紙と百両、それに名刀・天正助定を渡して、相川の元へ行けと命じた。孝助が駆け付けると、相川は喜んで迎え入れてくれた。「真っ青な顔をして、いかがなされた?」。相川は手紙を読むと、「なるほどな」。「泣いていてはわからん。そなたの手で主を突いたか?泣くではない。平左衛門殿の気持ちは痛いほどよくわかる。黒川孝蔵を斬り殺した平左衛門殿は、父の仇を討ちたくて武家奉公している孝助殿の気持ちを知っていて、主殺しになるところを、宮野辺のふりをして仇を討たせた。今度は飯島殿の仇を討ちなさい。もう、すでに飯島殿は宮野辺に殺されている。行くではない。それも全部、覚悟の上だ。仇を討たれよ」「はい」「いつ、立たれる?」「明朝には」。

「今宵、祝言をあげてもらえぬか?」「せめて、仇を討った後に」「それでは、恋い焦がれている娘が不憫だ。わしもどれだけ生きられるか。娘の夫が仇討ちにと、思わせてくれ。相川の養子となれば、武士だ。祝言をあげてくれ。これから、父と呼んでくれ」。孝助は相川の娘、お徳と目出度く、夫婦になった。「寝なさい。先にお休みなさい」「あなたが寝なければ、寝られません。明朝、お立ちになるならば、なおさらです」。鈍感な孝助に、「婆や、旦那様がお休みにならないのぉ」。
翌日。旅立つ孝助に「気をつけてな」と、藤四郎吉光の太刀を渡し、相川は「これと天正助定があれば、舅と主人が助太刀しているのと同様じゃ」。「メソメソするな、お徳」「旦那様はいつごろお帰りに?」「わかりません。1年、5年、10年、15年、20年・・・」「私は切なくて」「そなたは武士の妻だ。旅立ちに涙は禁物だ」。婆やも奉公人も泣いている。「泣くな」「父上も泣いています」「わしはよいのじゃ」。そうやって、孝助は主人・飯島平左衛門の仇討ちの旅に出る。