玉川太福「青龍刀権次」(6)「大団円~権次の改心」

木馬亭で「玉川太福月例独演会」を観ました。(2021・07・03)

きのうのつづき

玉川太福「青龍刀権次」(六)「大団円~権次の改心」

ストーリーは(三)「爆裂お玉」の最後に戻る。明治10年3月、桜の咲く神保町。権次に偽札などの罪をなすりつけていたのは、宇津木正之助だった。元は薩摩藩でたった100石取りの侍。爆裂お玉は宇津木の女房。25万円の財産家に見当をつけたので、権次に一口乗らないか、と誘う。

権次は大森の寺、天龍院の住職として入り込むことに。宇津木は牛込で森田馨と名乗って待機するという。

女房と子供にもう12年、会っていない。偽りの住職として居座りながら、ふと思い起こす日もあった。

ある日、権次の元に書生が訪ねてきた。実は、この書生は男に化けた女だった。訳を訊く。父は慶応元年12月27日以来、行方知らず。そこに私が生まれた。頼っていた親戚もあてにならず、母は暮らしに困り果てていた。乳飲み子を抱え、御茶ノ水から身投げしようとするところを、通りかかった男性に助けられた。

その男性は横浜野毛に住む、岡山様という方。お金を恵んで助けてくれた。それで甘酒屋をはじめた。その岡山様の娘さんが美人殺しの犯人だという。私の叔父が高橋与一郎で、その息子が刑事をしていてその話を聞いた。

ここで、権次の顔色が変わった。さては、この女性は我が子であったのか。その財産を狙うのに、加担しようとしていたとは…。

権次は築地警察に赴き、高橋刑事に一部始終を打ち明ける。お互いにビックリ!青龍刀権次は改心しました。叔父と甥は手を握った。

牛込で森田馨を名乗っている宇津木正之助は、御用!見事逮捕することができた。

「青龍刀権次」も見事、大団円。推理小説のように組み立てられたストーリー展開の面白さに圧倒された。第4話から第6話までの後半部分を聴いて、この噺の魅力が輝いた。講談から移植したネタだが、特に後半部分が浪曲オリジナルの脚本だという。

連続モノでも、単独で抜き読みできるものと、そうでないものに分かれてしまうが、このように第4話から第6話を続けて聴く機会があると、さらに浪曲の面白さが際立ってくる。

今回、太福さんの好プレーは、第1話から第3話までの「ざっくりあらすじ」をA4用紙1枚にまとめて開演前に配り、お客様に目を通してもらうという工夫をしたことだろう。これによって、後半部分の理解がぐっと深まった。

講談や浪曲は落語と比べて、連続物が多い。むしろ、連続物にこそ、魅力があると言ってもいい。だからこそ、今回のような試みは今後も続けてほしいと思う。

太福さん、ありがとうございました。