玉川太福「青龍刀権次」(4)「血染めのハンカチ」

木馬亭で「玉川太福月例独演会」を観ました。(2021・07・03)

太福さんの師匠・玉川福太郎が得意ネタにしていたのが、「青龍刀権次」だったという。基は講釈ネタだが、後半部分は浪曲としてストーリーを大幅に変えてあるという。太福さんは先月24日・25日の二日間、この木馬亭で通し口演をおこなった。全6話で3話ずつ。残念ながら、僕は都合が悪く行けなかったのであるが、7月の月例で後半部分を演るという。第4話「血染めのハンカチ」から第6話「大団円 権次の改心」まで。これは行かねば!とおっとり刀で駆け付けた。

「青龍刀権次」の抜き読みは何度も聴いたことがあるが、大概は第1話「発端」もしくは第2話「召し捕り」、第3話「爆裂お玉」のいずれかで、後半部分を聴けるのは非常に貴重なのだ。と言うのも、第4話と第5話には主人公の権次が出てこない。だから、抜き読みをしないということもあるのだろう。ただ、第6話、つまり最終話で4話と5話の伏線を回収して見事に第3話からの話がつながるので、今回の第4話から第6話までの通しは非常に嬉しかった。

玉川太福「青龍刀権次」(四)「血染めのハンカチ」

東京百美人の一人・江川敏子が何者かによって殺されたピストル殺人事件。この捜査を担当したのが築地警察の高橋刑事である。父は八丁堀・与力の筆頭をつとめた高橋与一郎。権次(高橋権次郎)の兄である。つまり、権次の甥っ子が高橋刑事だ。

高橋刑事が一膳飯屋に入ると、二人の俥屋が酒を飲みながら話をしている。「偽札事件の犯人も捕まらないのに、今度は築地の美人殺しだ。俺の睨んだところ、犯人は女だよ」。何か手がかりがあるかもしれない…高橋刑事は店から出た俥屋の後を追った。そして、小松橋のところで声を掛ける。

俥屋が話す。去年の11月11日。築地の二階屋から争いの声が聞こえてきて、しばらくして銃声が2発鳴った。店を飛び出してきたのは美人のお嬢さん。そのお嬢さんを乗せて、麹町の丸八といううどん屋の角で降ろした。お嬢さんが去ったあとに、足元を見たら、血がベッタリとついた絹のハンカチが落ちていた。そのハンカチは屑屋に売ったよ。

高橋刑事は、その屑屋を探し出し、そのハンカチを築地警察まで届けろと頼む。ただとは言わない。一日50銭出そう。当座の10日分で5円を渡す。俥屋はこれを引き受ける。俥屋の名前は有本仙吉。

仙吉は東京15区をくまなく探す。10日が過ぎようする頃、桜橋の居酒屋で飲んでいた仙吉は、聞き覚えのある「くずーい」の声を聞く。三味線堀のところで、血染めのハンカチを買った屑屋を見つけた。

仙吉はハンカチを買い戻し、築地警察の高橋刑事まで届ける。「城南女学校」の刺繍がされたハンカチだった。手がかりを掴んだ高橋刑事は喜んだ。